日中関係 交流を大切に

日中協会理事長・白西紳一郎さんの逝去を伝えた記事で紹介されたエピソードが心に残っています。「日中関係も同じだぞ。アイラブユーじゃなくて、アイニージューにならなきゃな」。カラオケの持ち歌、アイドルグループ「AKB48」の歌を引き合いに出して、話していたというのです。

白石さんは、熱い情熱をもって日中友好事業に取り組み、幅広い中国人脈で知られていました。「甘く愛をささやく新婚時代はいつか過ぎ去る。1980年代のような日中の蜜月時代が再び戻ることを期待しても難しい。でも、日本も中国も熟年夫婦のように互いを必要とする良い関係になれるのではないか」。そんな思いが込められていたといいます。

今年9月、日中国交正常化から45年を迎えました。けれども、両国が友好な関係を築いているとは言いがたいでしょう。日本を訪れる中国人は増える一方ですが、中国に行く日本人は増えません。友人がニュージーランドに留学に行った際、侵略行為にまつわる報道で反日感情を持つ中国人との間に自然と距離ができてしまった。そんな話を聞いたこともあります。両国の目に見えない溝や障害をどう乗り越えていくかが今、問われています。

今朝の紙面には、「中国人の日本語作文コンクール」で受賞を果たした学生たちの思いが掲載されていました。今年の課題は、「日本に伝えたい新しい中国の魅力」。黄鏡清さん(21)は日本人から中国人のマナーの悪さを指摘されたことをきっかけに、環境問題のNPO活動に参加。自国でも環境保護を大事に考える価値観が広がっていることを伝えました。広東省の伝統的な踊り「英歌舞」や漫才に当たる「相声(シアンション)」、漢方医薬などの伝統文化を紹介した学生もいます。

最優秀賞に選ばれたのは、宋妍さん(22)です。東日本大震災時に、友人や周囲の人を誘い、復興を願う思いを込めたビデオ制作に取り組んだ作文を書きました。桜の花を折り紙で作り、それを手に歌ったそうです。「中国人が折ることで、中国の好意が伝わると思った」と話します。

世界が多極化の時代を迎え、北朝鮮の核問題が深刻化する中で、日中の協力体制は今後さらに大きな意味を持つでしょう。今、メディアでは、中国共産党の動向、歴史問題、南シナ海海洋進出、爆買い、経済成長の行方などの情報が溢れています。しかし、どの問題においても、最後の鍵を握るのは、やはり、両国の対外政策に大きな影響を与える国民感情や世論です。双方の国民が互いを認め合い、信頼し合うために何が必要でしょうか。

日中の学生の交流を大事にしなさい。直接会って、話すことで、お互いを理解しなさい。

大学で中国政治について学んだ際、教授がそう話されていたのが印象的でした。

日中問題においては、お互いに悪い印象を持っている、といった勝手なイメージで距離が広がってしまった部分が大きいと思います。だからこそ、直接話して考え方の違いをぶつけ合い、それを生み出している背景や事情を学べば、理解を深められるのではないでしょうか。また、ドラマや音楽などの文化、卓球などのスポーツ、ビジネスなどにおいても交流を重ねることができると思います。政治や経済にまつわるものだけなく、日中の草の根交流や話し合いを丹念に報じたり、様々な切り口から中国を伝えたりすることも、人々の意識を変えよりよい関係を築くことにつながります。

参考記事:14日付 朝日新聞 東京13版 13面「溝残る日中、私がつなぐ 「マナー悪い」、変化へ努力 中国人の日本語作文コン」

     朝日新聞デジタル 「(風 北京から)「不東」を思い、杜康酒に酔う 古谷浩一」