地域医療を考える

TBSのドラマ「コウノドリ」を毎週みています。命を育てること、生きることをテーマに、産婦人科医の奮闘を描いたヒューマンストーリーです。先週放映された第8話では、重病を患いながらも妊婦さんのために懸命に働く、町唯一の産婦人科医の姿が描かれていました。現在の地域医療の実情を如実に表しています。

医師が都市部に偏り、へき地で不足する偏在問題は、2000年代半ばから深刻な社会問題とされてきましたが、いまだ解決には至っていません。厚労省は来年の通常国会に総合的な対策を盛り込んだ改正案の提出を目指しており、年内にも報告書をまとめるようです。 

具体策の柱は、都道府県の権限強化です。医学部入試で地元出身者を優先する枠の拡大や、医学部と連携した医師派遣の調整が盛り込まれる見通しです。地元和歌山県の医科大学でも、一定期間地域で勤務することを条件に奨学金を支給する「地域枠」が存在します。友人の多くも「地方勤務に不安はある」と話していますが、この制度を利用して大学に通っています。キャリアの妨げになるという批判もありますが、制度があれば確実に人数を確保できますし、地域医療の実情を知ることでまた違った学びを経験できるかもしれません。

医師不足地域での一定期間の勤務経験を有する医師を国が認定する制度も検討されています。認定を病院の管理者に将来就く際の要件とすることで、地方勤務を促す狙いがあります。病院のホームページなどに認定医を掲載することや医療機関への経済的な優遇策を導入することを実現できれば、一定の効果は期待できるでしょう。

ただ、このような「対症療法」だけで本当に問題が解決に向かうのか、という疑問も抱きます。住む地域によって医療の機会に大きく差が出るのは望ましくありませんし、医療の衰退は人口の減少や地域経済の活力を奪うことにもつながります。今回は、医療側の反発を受け強制的に地域に配置する案は見送られました。もちろん現場にしかわからない空気感や思いもあると思いますが、公立病院には最低限必要な医師数を設け、数年ずつの勤務を義務付けるなど、地域の実情によっては大胆な手を打つことも検討すべきだと思います。

 

参考記事 4日付 読売新聞 13版(東京) 2面 「スキャナー 病院長に「地方勤務」要件…「医師の偏在」解消へ検討」