一帯一路、肝はロシア?

 日本政府は北朝鮮の核開発が進むなか、中国が進める経済圏構想「一帯一路」に協力する方針をまとめました。中国政府から核開発阻止の協力を引き出すとともに経済協力を強化することが狙いです。

 朝刊報道によると「重点となっているのは①省エネ・環境協力②産業の高度化③物流網の利便性向上の三つ」となっており、軍事利用を目指しているとされる港湾開発などには関与しない方針を示しているようです。

 中国としては「一帯一路構想」を通じて、アメリカが主体となる現在の国際秩序を壊し、国内の成長への潤滑油になることを期待しています。しかし、今後どのような問題が起きるのかは未知数です。構想自体の無計画さや各部門同士の連携の悪さなどから、参入を戸惑う声も少なくないようです。

 地政学的な分析に定評がある米国のジャーナリスト、ロバート・カプラン氏は、構想の先に必ず中国とロシアの衝突があると指摘します。

彼は、まず中国側が「一帯一路構想」に複数の役割を果たすことを期待していると考えます。旧ソ連圏の中で資源が豊富な中央アジアの国々との結びつきを強める、中央アジアの拠点となるイランとの関係の改善などが挙げられますが、それよりも大きい目標がユーラシアの支配であり、大国ロシアを地域覇権争いの二番手に降格させることであるとしています。

そういったことから、カプラン氏は現状の中ロ関係を踏まえアメリカの静観を唱えています。今後、日本の協力が決まったことで「一帯一路」への国内での関心がより一層高くなると思いますが、キーワードとなるのはアメリカではなくロシアかもしれません。

28日付 読売新聞朝刊(14版)1面(総合)「一帯一路日中の企業支援」
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 3日付 The New York Times Opinion “The Quiet Rivalry Between China and Russia” by ROBERT D. KAPLAN