失った信頼を取り戻すには

NHKの連続テレビ小説を楽しみにしています。今シーズンの作品のタイトルは『わろてんか』。ヒロインが小さな寄席の経営を始め、「笑い」を大きなビジネスにしていく物語です。吉本興業の創業者がモチーフになっています。21日に放送された第44回が印象的でした。テーマが「信用」だったからです。ヒロインたちは儲けることを第一に考えて経営をしていたのですっかり客足が悪くなってしまいました。失った信頼を取り戻すために知恵をしぼる様子が描かれていました。最近のニュースを見ていると思い当たるところが多いですね。

まずは角界。今朝のニュース速報で横綱日馬富士関が引退することを知りました。暴行事件をめぐっては不確定な情報が飛び交い、角界への不信を払拭しきれません。「ただ真剣な勝負を観たい」というファンをしらけさせています。

また、日本経済を支えてきたものづくりの世界でもいえます。28日に合成繊維メーカーである東レの子会社(東レハイブリッドコード)が製品の品質データを改ざんする不正があったと発表しました。思い返せば、10月には神戸製鋼所、今月23日には三菱マテリアルグループが検査データの改ざんを公表しています。

こうした品質管理に関わる改ざんは、ものづくりに対する裏切りと同じです。品質を保つためのルールを軽視することが問題です。優れた機能や性能を実現し、高い技術で、品質の良い商品を届けてくれる。それが日本製品の魅力だと思います。今は、海外の製品で安くてもそれなりの機能を持ち合わせたものを買うことができるようになりました。それでも日本の市場では国内製品の人気が根強いです。これは長い時間をかけ信頼を築きあげた結果なのです。

相次ぐ素材メーカーの改ざんと日馬富士の暴行事件に共通するのは、発覚から報告までに時間がかかったということです。「品質上、異常レベルではない」なら問題ない。「怪我も隠すことができるだろう」を繰り返していては変わりません。まずは問題だと認識し、うみを出し切ることからです。

朝ドラのヒロインは、経営を見直し、遠のく客に対して地道な努力をしていました。客の履物をきれいにすることで「またこの寄席で観たい」と思ってくれますように、陰ながら汗を流していました。熱心に取り組めば信頼は取り戻すことができると信じています。

参考記事:
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