基地問題とわたしたち

皆さんは、6月23日が何の日かわかりますか。大学で学ぶまで、沖縄戦の組織的戦闘が終結した慰霊の日を意識したことはありませんでした。高校の修学旅行で基地の近くを訪れた際、耳を防ぎたくなるほどの騒音に「こんなところで生活できない」と実感した沖縄の日常でさえ、恥ずかしながら忘れてしまっていました。沖縄の基地問題では、人々の無関心という課題が浮き彫りとなっています。

「沖縄の現実が本土に届いていない」

沖縄タイムス記者の講演会に参加した時、そう話されていたのが印象的でした。沖縄タイムスや琉球新報の紙面を見ると、国と本土に対する不信感や利用されてきたことへの憤り、また基地や米兵犯罪によって戦争が今なお身近にある切迫さが伝わってきます。ですが、私たちが両紙を目にする機会はほとんどありませんし、一般紙を読んでいても沖縄の記事に触れることは少ないです。 

本土と沖縄の溝を埋めるためには、何が必要でしょうか。朝日新聞の「フォーラム沖縄  1 基地と選挙 2 本土との溝」では様々な意見が掲載されており、その突破口を提示しているように思います。

本土の多くの県は自民を選び、日米同盟にも米軍基地にも賛成しているので、本土に基地を移す。それができないなら、沖縄独立(沖縄県・30代女性)

地政学的に沖縄に米軍基地が必要な事実は変えられず、現地の方には必要な補償を丁寧に説明して実施していくしかない。(東京都・30代男性)

沖縄県外が『ひとごと』『無関心』のまま、沖縄に過重な基地をおいて安穏と日米安保の恩恵にあずかっていることも認識に差が生まれている要因だと思います。(東京都・20代女性)

沖縄にある米軍基地のみならず、本土にある米軍基地にも同時に目を向けていくことが大切だと思います。 (神奈川県・30代女性)

 私は憲法9条の改正には反対で、今こそ基地の縮小や分散を進めていくべきだと思っています。一方で、自分の住んでいる地域に基地を建設すると言われれば、本当に受け入れられるのかというもどかしさもあります。心の中にある、沖縄の犠牲を見て見ぬ振りをする弱さも否定できません。

沖縄問題は本当に難しいと感じます。政府の経済的支援が基地への依存を高めた歴史や、基地の移設が日米同盟や国際情勢に影響しうる現実も、状況を複雑化させているでしょう。沖縄の中でも一枚岩の言論ではなく、葛藤や揺れなど様々な感情があると思います。「基地がなくなれば経済が潤う」「なくせば経済は立ち行かない」といった、二元論で解決できるものでもありません。

住んだこともない私が、沖縄の人々の気持ちをすべて理解することは到底できないでしょう。それでも、沖縄や基地に近い人も遠い人も、知識が豊富な人もそうでない人も、それぞれ考えを発信し、議論や紙面を通して意見をぶつけ合うことが、基地問題を日本の課題と捉え、沖縄の痛みを知ることにつながると考えます。

 1113日付 朝日新聞朝刊(東京13版)9面 「フォーラム 沖縄 2本土との溝」

   5日付              「フォーラム 沖縄 1選挙と基地」