先月福島県昭和村を訪れました。村は、人口の50%以上が65歳以上の高齢者である限界集落です。そう聞くと、一刻も早くその状況を改善しないといけないと感じてしまいますが、町の人はそこまで将来に不安を感じていないといいます。それどころか、「戦争があっても生き残ることができる」東京から村に移住してきた女性の方は言います。村では、自給自足の生活が可能です。資本主義で重視される競争原理とは真逆の価値観がそこにはありました。
「結局、幸せって何だろうね」。その方は、そう問いかけました。確かに、普段都会に住んでいて、物がそろわない経験をしたことがほとんどありません。仕事や交通機関も充実していて、不便だと感じたことはほとんどないですが、それが幸せなのかと言われると、断言できません。
若者を呼び込む企画も行っています。本州で唯一生産されている特産品のからむし織。その織り手を養成する「織り姫・彦星」制度では、半数近くの利用者が定住するきっかけとなりました。筆者自身は不便で生活ができるのか心配になりますが、移住してくる方はそこまで便利さを追い求めていないのです。
先日、地方移住が日本の将来にとって大事だということを述べました。(地方創生、やっぱり大切だった)ただ、メリットが具体的に見えないと、移住を進めていくのは困難でしょう。本日の朝日新聞では、山形県酒田市で移住してきた若者たちが設立した会社が地域づくりの一端を担っている例が紹介されています。若い人が入ってくることで地域が変わっていく実感が、移住するうえでの魅力になるのでしょう。
地方の問題を考えることは、同時に都会の問題を考えることになります。都会に住むことが当たり前になっている今、改めて生きていくうえで何が大切か、考え直してみるのが重要です。
参考記事:
5日付 朝日新聞(東京14版)24面(第2東京)「「若者会社」移住して設立」