スキージャンプ台の上から見たものは

 選手以外でスキージャンプ台に上った経験のある人は、それほどいないでしょう。この夏、秋田県鹿角市でその貴重な体験ができました。

 知り合いで、市が「移住コンシェルジュ」として採用した、3人の地域おこし協力隊の方々に「花輪スキー場ジャンプ台」に連れて行ってもらいました。彼らの主な仕事は、移住希望者の相談対応や情報発信です。

 ジャンプ台は規模によってクラスが分かれており、ここにはノーマルヒル、ミディアムヒル、スモールヒルの3種類がありました。リフトを使ってノーマルヒルの頂上へ上ると、鹿角の街が一望できました。高所恐怖症の私は、最初こそ足がすくんでしまいましたが、徐々に高さに慣れてきました。とはいえ、スタートバーには怖くて座れません。予想を超えた急勾配だったのです。選手と同じ目線を体験したことで、これまで縁遠く感じていたスキージャンプを少し身近に感じました。

 冬の競技と思われがちですが、「サマージャンプ」といい、夏でも大会が開催されます。この日も中学生の男子2人が練習に来ていました。


▲ジャンプ台の上より

 案内してくれたジャンプのベテラン、小山内佳彦(32)さんも「最初は怖かった」と話します。元日本代表の小山内さんは、2006年冬に長野県白馬ジャンプ競技場で行われた全日本学生選手権で、ノーマルヒル100mの最長記録を出しました。この記録は今も破られていません。

 ジャンプのスキー板やジャンプスーツも見せてもらいました。スキー板はよく見るアルペンスキー用のものに比べて非常に長く、選手の身長や体重を基準に使用する板を決めます。スーツは、選手が着ているのを映像で見ると薄くて体にフィットしている印象でしたが、実際は5mm程度の厚みがありました。

 花輪ジャンプ台には、スキージャンプ界のエース高梨沙羅選手(20)も合宿などで訪れたことがあるそうです。その高梨選手のインタビュー記事が、今日の朝日新聞に掲載されていました。コーチを務める元ジャンプ選手の父の背中を追って、小学2年生の時にジャンプを始めた高梨選手。

私のジャンプは父に似ているそうです。父のジャンプを知る方から、よく言われます

 彼女のように、家族にジャンプ経験があることがきっかけで競技を始める子どもは多いといいます。競技人口が少ないスキージャンプですが、ソチオリンピックの銀メダリスト、「レジェンド」こと葛西紀明選手や高梨選手の活躍で、興味を持つ人は増えていくかもしれません。

 スポーツを通して親子の絆を育むこともできるのか。ジャンプ台を実感した今、親と一緒に身体を動かした経験が少ない身にはなおさら羨ましく、新鮮に感じます。

参考記事:
25日付 朝日新聞朝刊 東京13版 30面「ジャンプ指導中 家より多弁」