アルバイト先がある東京・虎ノ門では、いま再開発計画が進んでいます。このエリアの顔とも言える超高層複合ビル「虎ノ門ヒルズ」周辺では、昨年から建物の新築や道路工事が増えています。今日の日本経済新聞の記事によると、この計画は国家戦略特区のプロジェクトに位置づけられており、五輪後の東京の経済成長を加速させる拠点を目指しているそうです。
この界隈で、いま私が気になっているのは「旅する新虎マーケット」です。2020年の東京五輪でメインスタジアムと選手村を結ぶシンボルストリート「新虎通り」沿いに、今年2月にオープンしました。全国各地の魅力を集めて発信し、地方創生につなげるのがねらいです。カフェやグッズストア、飲食ができる4棟のスタンドを展開するほか、期間限定でポップアップイベントも開催しています。全面ガラス張りで中の様子がよく見える建物は、それ自体がまるでショーケースのようです。ディスプレイもセンスが良く、「おしゃれ」の一言に尽きます。
▲「旅するストア」外観
ここでは3ケ月ごとにテーマを設け、出展する自治体の伝統工芸や食を紹介しています。7月~9月のテーマは「夏疾風(なつはやて)の物語 ローカル線でめぐる越後の祭り」。新潟県から村上市、燕市、三条市、十日町市、長岡市の五つの自治体が参加しています。スタンドでは、十日町名物の「へぎそば」や、村上市の名産品「塩引き鮭」を使った弁当などが味わえます。
▲旅するスタンド1「長岡花火 旨いもん うちあげ亭」
大学進学のために秋田から上京して思ったのは、「東京は魅せ方がうまい」ということです。例えば同じような商品が並んでいる時に、「こっちかな」と直感的に選んでしまうようなモノをつくりだすことに長けています。その少しの差は、コンテンツやターゲットの設定、デザイン、キャッチコピーなど、さまざまな要素がどれだけ研ぎ澄まされているかによって生まれているのではないでしょうか。
東京から地方の魅力を発信する取り組みは必要ですが、心配なのは、消費者が東京での体験だけで満足してしまうことです。大都会で手に取って、眺めて、味わうことがあくまできっかけとなるように、地方自治体はその「次」を担わなければなりません。ポイントは、地域外の人々のニーズをいかに正確に把握できるか、そして地域の価値をいかにブランド化できるかです。結果的に都市側だけが得をするような一方通行の地域プロモーションにはなってほしくありません。
参考記事:10日付 日本経済新聞朝刊 13版 35面「虎ノ門 オフィス集積加速」