目的と手段が入れ替わっていないか

 都民ファーストの圧勝に終わった東京都議選からおよそ1か月。小池百合子知事に近い若狭勝衆院議員は30日、テレビ朝日の番組で、新党結成に向けて準備を加速させる意向を明らかにしました。年内に衆議院の解散がある場合に備え、準備を進める必要があると述べています。

 小池氏の圧勝に終わった昨年の都知事選に続き、自民党のつまずきにも助けられ都民ファーストが大勝した都議選。今や彼らの前に立ちはだかる有力な政敵はなく、順風満帆の状況です。しかし、その主張は築地市場の移転問題など地元密着の政策や、「古い自民に対抗し新しい議会を目指す」といった漠然としたスローガンに終始しています。そういう彼らが国政に進出するとしたらどのような政策を打ち出すのでしょうか。

 本来、「こういう世の中を目指したい」「ああいう制度が必要だ」という自らの信念を持ち、その目的を達成するために地方議員や国会議員になるという手段に訴えるのが筋のはずです。しかし、今や議席を確保するという手段が目的と化し、逆に本来の目的であるべき政策など存在しないことさえ当たり前になっていないでしょうか。国政は、地方選で勝利したあとの腕試しではないはずです。

 若狭氏はそのテレビ番組で同時に、「(新党を)つくるとすれば、半分くらいは女性の候補者にして当選してもらいたい」とも語りました。繰り返しになりますが、政治家は自らの政治的な信念を実現するために、それに近い政党から立候補するなり無所属で立つなりするはずです。

 最初から「女性を半分」という結果を目的にしては支離滅裂になってしまいます。既成政党憎し、という感情論だけで一生懸命議席をとるのではなく、彼らにしかできない、国民が求める政策を前面に出して勝負にでてほしいものです。

参考記事:

31日付 読売新聞朝刊13版4面 「年内解散も想定 新党へ準備加速 若狭衆院議員」