レッスンで著作権料が発生?

 幼稚園に通う頃、ピアノを弾く姉の姿を追いかけるように音楽教室に通い始めました。いわゆる『ヤマハっこ』です。ディズニー映画リトルマーメイドの「Under the sea」、ミュージカル映画「サウンド・オブ・ミュージック」、ジブリメドレー…。友達とともにエレクトーンで一つの音楽を奏でたり、歌ったりしました。それが、楽しい音楽への入り口だったかもしれません。今でもポピュラー、クラシックを問わず、楽器を弾いたり、聴いたりすることが大好きです。

 そんな音楽への扉ですが、お金の問題から、その入り口が狭まってしまうかもしれません。今年2月、音楽教室での演奏について、日本音楽著作権協会(JASRAC)が著作権料を徴収する方針を示したことが、物議を醸しました。著作権は創作者が亡くなってからも50年間にわたって存続します。個人で管理するのは難しいため、現在は大部分の音楽をJASRACが管理しています。争点は、公衆に聞かせることを目的に演奏したり歌ったりすることで生じる「演奏権」の法解釈の問題です。

 今日の紙面には、日本音楽著作権協会(JASRAC)の浅石理事長のインタビューが掲載されていました。「音楽教室の生徒の演奏も、自分や先生に聞かせるもので、演奏権は働く。講師は教室を運営する事業者の従業員であり、その演奏は事業者の演奏と変わらない」。自信たっぷりに主張しています。一方で、音楽教室側は、手本を示して演奏技術を伝達するという教育目的で行っていると反論します。「音楽教育を守る会」を発足させ、文化庁に56万の反対署名を提出しました。

 私は、音楽教室で著作権料を徴収することに反対です。著作権料を取れば、レッスン代の値上がりや事業の撤退につながり、気軽に音楽を楽しむ人が減ってしまうかもしれないからです。また、小さな子供から大人まで音楽を始める際には、とっつきやすい現代の曲から入るものですが、それができなくなったり、様々なジャンルの音楽に触れる機会が減ったりすることも懸念されます。さらに万が一徴収されるとしても、金額が受講料収入の一律2.5%という仕組みには納得できません。集めたお金が、著作権を持つ人にどう分配されるのかが見えないからです。

 JASRACと音楽教室の間では平行線の議論が続いていますが、どのような着地点を迎えるのでしょうか。今後は、著作権者にも、この問題をどう考えているのか、より積極的に声を上げていくことも求めたいものです。楽しい音楽を始めるきっかけが減らないように、そして音楽文化の発展を阻げることにならないように、円満な解決を望みます。

 

参考文献:朝日新聞 21日付 14版 31(文化・文芸)面 「音楽教室から著作権料『正当』」