わたしの高校には、「理系体験型クラス」というクラスがありました。普通のクラスと違うのは、提携の大学を訪れて研究や実験を実際に体験する活動があるところです。 そこで学んだなかに「筋電を使った解除ロボットの開発」というものがありました。 専用の電極パッドを使い、脳から筋肉に流れる微弱な電気信号(筋電)を読み取り、コンピュータで解析して体の動きをロボットでサポートする。そんな仕組みです。ロボットの力が加わることで要介助者の体を軽々持ち上げたり、足腰の弱い老人が階段などの段差を昇るのを助けたりすることが目的です。 それまでの研究では、人間の体と連動した一体型のロボットを使うという発想がありませんでした。人間とロボットを連動させるという意外な発想を加えたことで、サイズも小さくなり、また要介助者、介助者双方が使える介助ロボットの開発に成功したのです。 意外な発想から、人の日常生活に役立つ製品を開発するというやり方は、何も介護や最先端技術の世界だけの話ではありません。 皆さんの家に必ずといっていいほど存在する透明なプラスチック製衣装ケース。今ではごく一般的なものとなり、全国どこでも手に入りますが、これも意外な発想から生み出された製品のひとつです。 実はこの透明なプラスチック製衣装ケース、最初に発売したのは大手メーカー・アイリスオーヤマ。社長である大山氏は、釣りに必要な防寒具を当時まだ透明ではなかった衣装ケースから探し出すのに苦労した経験から、外側からでも中身を簡単に見ることができるケースを発案しました。 朝日新聞の記事によれば、アイリスオーヤマでは宮城県の本部工場と大阪の研究・開発拠点、中国などの海外拠点をテレビで結んで行われる「新商品開発会議」が定期的に開かれます。大山氏は新商品企画に必ず「なるほど」を求めるそうです。機能性や目新しさだけでは、消費者は製品に手を伸ばしてはくれません。作る側の発想が鍵です。 さて、みなさん。今皆さんのいる空間に「なるほど」商品はいくつあるでしょうか。自分の考えを持ち、斬新な発想が求められる昨今です。大山氏はその考え方を生活用品の開発という形で発揮しました。 現れる形は人それぞれ、これから社会に出る私たちが生み出す「なるほど」の可能性に注目してください。 14日付 朝日新聞朝刊(14版) 8面(経済)「「なるほど」を新商品に」