粗末な国会審議にがっかりだ

 犯罪を計画段階から処罰する「共謀罪」の構成要件を改めて「テロ等準備罪」を新設する法案が15日、参議院本会議で可決され、成立しました。通常、提出された法案は議長によって所管の委員会に委ねられ、審査されます。そのうえで本会議にかけられ、最終的に採決されるのです。ですが、今回は委員会審議を「中間報告」という手続きで省略し、本会議で成立させました。

 なぜ、そこまで急がなければならなかったのでしょうか。加計学園をめぐる追及に恐れているのか。東京都議選が控えているからなのか。いずれにせよ参議院において、政府や与党に法案のあいまいな部分への丁寧な説明を期待していた分、粗末な国会審議という印象しか残りません。

 法案に賛成、反対に関わらずこのような乱暴な国会の姿勢は看過できません。では、各紙はどう捉えているのでしょうか。社説の見出しを振り返ります。

 見出しから批判が伝わってくるのは日本経済新聞と朝日新聞です。

日本経済新聞(16日付)「あまりに強引で説明不足ではないか」
朝日新聞(15日付)「国会最終盤 極まる政権の強権姿勢」

それに対し、少し物足りなかったのは読売新聞。法律をこれから有効に機能させることの重要性を指摘しています。

読売新聞(16日付)「凶行を未然に防ぐ努力を続けよ 法に基づいた適正捜査の徹底を」

 中間報告のやり方について、まったく触れていないわけではありません。社説の最後で、小さいですが「乱暴だった「中間報告」」としています。法律がテロ抑止への第一歩であり、条約締結のために必要だという主張は理解できます。ですが異例とも言える対応への疑義は、もっと声をあげてほしかったと思います。

 最後は多数決。これに異論はありません。ですが、「いつ採決しても状況は変わらないので、きょう採決したい」。いくらなんでもあまりにも乱暴すぎるでしょう。

参考記事:
16日付 日本経済新聞朝刊(東京)(東京14版)2面(社説)「あまりに強引で説明不足ではないか」
同日付け 読売新聞朝刊(東京14版)3面(社説)「凶行を未然に防ぐ努力を続けよ 法に基づいた適正捜査の徹底を」
15日付 朝日新聞朝刊(東京12版)14面(社説)「国会最終盤 極まる政権の強権姿勢」