PKO撤退はおわりではない

 日本から遠く離れた灼熱の地で、道路整備や施設整備などの任務を遂行する自衛官の姿。防衛省のHPでは、南スーダンに派遣された隊員の活動や生活に関する動画を見ることができます。

 政府は10日、南スーダン国連平和維持活動(PKO)に従事している陸上自衛隊員を、5月をめどに撤収させる方針を固めました。20121月から派遣が開始され、これまでの累計で4000人に上ります。昨年12月には、救援のために武器使用を認める「駆けつけ警護」などの新任務を付与された部隊が、現地で活動を始めていました。

 しかし、近隣で大きな武力衝突が発生するなど、治安情勢の悪化が懸念されてきました。撤退の理由について安倍首相は「自衛隊が担当している施設整備は一定の区切りをつけることができると判断した」と強調し、「治安の悪化によるものではない」と述べました。もちろん、PKOの活動が危険と隣り合わせであるのは当然です。ただ、南スーダンで何が起こっているのか。現場はどのような状況なのか。どういう経緯で撤収に至ったのか。撤退が決まったとしても、これまでの経緯についてしっかりと説明責任を果たすべきです。

PKOの経験を次に生かそう

 次のような見出しで、日本経済新聞の社説は、次の国際貢献のために部隊の派遣や撤収について明確な基準を設けるべきだと指摘しています。国会では武力衝突の状況を記した日報開示の情報が錯そうしたり、「武力紛争」か「戦闘」かという議論が巻き起こったりする出来事もありました。今回の教訓を生かすためには、情報公開を徹底することが欠かせないと思います。危険が伴う平和維持活動の在り方や、憲法9条との整合性について、踏み込んだ議論をするための貴重な判断材料となります。

 一方で、政府は飢饉の発生を受けて600万ドル規模の食糧支援を検討していることも発表しました。国内では多くの市民が残虐行為にあい、人道的な危機に瀕しています。アフリカで取材を続ける朝日新聞記者のツイートを見ても、市民の過酷で厳しい環境がひしひしとつたわってきます。撤収が完了した後も、南スーダンの現状を知ること、状況や地域に応じてどのような支援が必要であるかを考えていくことも忘れてはなりません。

 

参考記事:12日付 日本経済新聞 12版 3面「社説 PKOの経験を次に生かそう」

         朝日新聞 13版 3面「PKO5原則 守られたか」

8面 「社説 PKO撤収 「治安悪化なぜ認めぬ」」

防衛庁HP    You Tube 防衛省チャンネル 

http://www.mod.go.jp/j/approach/kokusai_heiwa/s_sudan_pko/douga.html

朝日新聞 三浦秀之記者  https://twitter.com/miura_hideyuki?ref_src=twsrc%5Etfw