ライドシェア 都市にも必要?

 企業や個人が、余ったものや時間をインターネットを介して貸し借りする「シェアリング・エコノミー」。米国発のビジネスが、世界的な広がりを見せています。その一例といえるライドシェア解禁の検討作業を、政府の規制改革推進会議が始めました。このサービスはインターネットを通じて運転者と乗りたい人を結び付け、個人が自家用車で送迎するというものです。現在、日本ではマイカーによる有料送迎は「白タク行為」として道路運送法で原則禁止されています。ただし「交通空白地」で例外的に認められているほか、国家戦略特区でも過疎地を対象に解禁していますが、地域のタクシー会社などとの合意が必須で普及は限定的です。

 米ライドシェア大手のウーバーテクノロジーズは、アフリカや東南アジアを含め70以上の国や地域で事業を展開。時間や場所に縛られずに利用できる利便性や価格の低さが特徴です。高齢ドライバーの事故が相次ぎ、その免許返納が課題となるなか、日本でも過疎地域の生活の足として注目が高まっています。また訪日する外国人観光客を過疎地域の観光スポットに誘致する際にも役立ちそうです。日本で初めてウーバーの配車システムを開始した京都府京丹後市では、NPOと連携し、IT機器を持たない高齢者を対象に端末の貸与や電話サービスを提供しています。

 ただし、普及には課題が少なくありません。なんといっても気になるのは、安全性でしょう。例えば市民ドライバーに講習を義務付けたり、運転の評価やコメントを集めたりする工夫がなされています。それでも、事故を避けられなかったり、事件に巻き込まれたりする懸念は排除できません。利用者のリスクを考えれば、保険の適用や責任の所在確認など細やかなルール作りが求められます。

 スマートフォンやインターネットの普及は、私たちの生活に大きな変革をもたらしてきました。確かに、ライドシェアという選択肢が増えれば暮らしはいっそう便利になるかもしれません。それでも、都市部においては決定的な必要性を感じません。そのうえ解禁に向けた動きに反発しているタクシー業界にも、生き残りをかけた動きがみられるようになりました。

 先日、東京都内では初乗りを410円とする大胆な策がうちだされました。また妊婦を優先して病院に送り届けたり高齢者の買い物に付き合ったりする手厚いサービスや、アプリを使って配車をする取り組みも広がりつつあります。まずは都市ではなく過疎地域に限定して、導入のための法整備や改革を早急に進めていくべきです。そして今後どうサービスを広げていくかは、より慎重に議論を重ねていく必要があります。

 

参考記事:5日付 日本経済新聞 13版 1面「ライドシェア解禁検討」

3面「ライドシェア 自家用車で乗客運ぶ」

10月26日付 読売新聞「論点スぺシャル ライドシェア普及するか」