集いの場でフィットネス、という時代

 大学生になってから、平日の昼間に家の近所にいることがたまにあります。買い物をしに出かけたり、風邪をひいたときに病院に行ったり―。そのような時、周りを歩く多くの人がお年寄りだということに気づかされます。駅の近くのカフェなどでは、お年寄りが集まって談笑したりする様子も見られるようになりました。仕事や子育てを終えた高齢者の方々は、余裕ある時間を使って交流を求めているのかもしれない、と思ったことがあります。そんな街かどのニーズが、新たなサービス競争の幕開けになるかもしれません。

 交流の場所といっても、それはカフェでもなければ公共施設でもない、フィットネスジムです。イオンは高齢者向けに小型の簡易フィットネスジムの多店舗展開を始めます。健康機器大手のタニタと組み、健康管理プログラムを活用してサービスを行うとのことです。激しい運動より利用者の交流を重視し、店の約半分は飲食や休憩スペースに充てるそうです。ほかにも、セントラルスポーツはスタジオとプールで高齢者向けのプログラムを実施。東急スポーツオアシスは「らくティブスクール」と名付けた、軽い筋トレや体の痛みを予防するプログラムを展開したり、ルネサンスはリハビリ施設「元気ジム」を運営したりするなど、フィットネス業界ではシニア向けサービスが広がりつつあります。

 経済産業省の特定サービス産業動態統計調査によると、フィットネスクラブの市場規模は15年度では約3100億円で、前年度比にして約2%増えています。また、シニア層は若い世代より定着率が高いこともわかっています。このためフィットネス各社もシニア層の取り込みに力を入れているようです。運営会社にとっては、離れにくい顧客を獲得することができ、利用するシニア層の方々は健康を維持できるだけでなく、今日なかなか取りにくくなってきた地元の交流も深めることができます。さらには、定着率が高いシニア層ならば、店舗が最近の出席状況などで、地域顧客の健康状態を見守る役割も担えるかもしれません。体を動かし、同時にコミュニティ形成の助けにもなるフィットネスクラブ。民間の積極的な参入で、新たな時代のサービスが普及していくかもしれません。

参考記事:19日付日本経済新聞朝刊(東京13)15面「高齢者向けジム参入」