消費者の「ビール離れ」が進んでも・・・

  昨年、アルバイトでサントリービールの販売促進をしました。スーパーの酒類コーナーで、お客様にサントリーの商品を勧めます。「やっぱりキリンやアサヒが人気なんだな」。懸命にアピールしましたが、人気だったのはサントリー以外の商品でした。もう一点気づいたのは、「よく売れるのは発泡酒や第3のビールである」こと。消費者の節約志向を実感しました。「仕事終わりのビールは最高だ」という方も多いかもしれません。ですが、いま国内での「ビール離れ」が止まりません。

  国内ビール大手5社が発表した2016年の出荷量は、「ビール」と「発泡酒」、「第3のビール」いずれも前年割れとなりました。3種類がともに前年割れとなったのは今回が初めてで、各社は不振のビールの建て直しを急いでいます。主力の飲食店向けが落ち込んだのに加え、消費者が缶チューハイなどに流れており、「ビール離れ」は止まりません。

  発表によると、ビール系飲料の総出荷量は、前年比2.4%減の525万キロリットルで、1992年の統計開始以来、12年連続で過去最低を更新しました。内訳はビールが前年比2.0%減、発泡酒が同6.8%減、第3のビールが1.2%減で、ハイボールや缶チューハイなどに人気を奪われています。各社はこれまで、ビールの売り上げの落ち込みを、酒税が安い発泡酒や第3のビールで補ってきました。しかし13年まで伸びていた第3のビールも14年以降は3年連続で減っています。

  今後の「酒税の見直し」も、各社の課題となるでしょう。ビール系飲料は、20年から26年にかけて酒税が統一される見通しで、ビールは今より値下げになり、発泡酒などは値上げになります。それを見据え、各社は、今年は大型商品の投入を従来よりも抑え、強みを持つ既存ブランドの育成を優先させる考えです。

  しかし、「ビール離れ」がどれだけ進んでも、「ビール好き」が少なからずいることを忘れないでほしいです。先日、梅田にあるクラフトビール専門店を訪れました。関西の地ビールを中心に扱っており、夜景を見ながら料理とお酒を楽しむことができます。店内には若い人だけではなく40~50代と見られる男性客も多くいました。巨大なビール市場の中でクラフトビールのシェアは1%にも満たないほどですが、その出荷量はここ数年で右肩上がりです。視点を変え、「消費者がいま何を求めているのか」考えれば、ビールにもまだチャンスはあるのではないかと思います。

  国内市場の縮小は、ビール業界だけの課題ではありません。ビジネスは簡単ではないと思いますが、「少し視点を変えて」メーカーにはこれからも美味しいビールを売り続けて欲しい。そんな期待をこめ、麦酒グラスの気泡を見つめました。

 

参考記事:

17日付 朝日新聞朝刊(大阪14版)6面(経済)「縮むビール 3種前年割れ 総出荷量12年連続減 酒税統一にらみ商品開発急務」

同日付 読売新聞朝刊(大阪13版)8面(経済)「『ビール離れ』止まらず 出荷量12年連続最低更新」

同日付 日本経済新聞朝刊(大阪13版)13面(企業・消費)「昨年ビール系出荷量2.4%減 首位アサヒ、シェア上昇 第3のビール刷新奏功」

関連記事:

食品産業新聞「クラフトビール」に脚光(2016年9月16日付)

http://www.ssnp.co.jp/articles/show/1409160003473013 (17日閲覧)