医療の世界もビッグデータ活用へ

 私の特技は空手です。中学や高校時代に比べると練習量が減ってはいるものの昔取った杵柄で、今は子供たちに指導をしています。あるとき、2人の子供から「もっと強い突きを出したい」と言われました。自分のノウハウを教えると1人は上手になりましたが、もう1人は慣れない動きから、逆にぎこちなくなってしまいました。そんな困ったときには「もう少し練習してみて、ダメなら違う方法を考えよう」とその場を切り抜けてしまいます。

 そうした逃げの言葉では済まされない現場があります。子供の急な病気や怪我に関する電話相談です。「#8000」に電話を掛けると、発信地の窓口につながり、医療機関を受診すべきかどうかや家庭での看護方法などを看護師や小児科医らが助言してくれます。

 厚生労働省はその電話相談に寄せられた事例をビッグデータとして分析することを決めました。そうすることで子供たちの様々な状況や容態に合った的確な対応ができるようになります。

 ビッグデータの応用は子供の医療だけにはとどまりません。将来の治療法の確立や新薬の開発することにも役立てられるかもしれません。政府は、症例や治療経過を医療系の学会など、国が「認定機関」と指定した団体に集約し分析できるようにする制度を作ろうとしています。

 医療情報は極めて重要な個人情報であるため、取り扱いには注意が必要ではあるものの、この医療でのビッグデータの応用は非常に有効だと感じました。患者一人ひとりによって異なる病状などにベターな対応が取れることは、利用者にとっても良いことです。

 ただすべてをデータに頼るのでは困ります。しっかりと患者を見つめ、これまでの情報を活用しベストな対応をしてほしいものです。私ももっと多くの先生から学び、子供のくせを見抜き、それぞれにあった指導ができるようになりたいです。

参考記事

1月10日付 朝日新聞 13版3面「子の急病相談電話 ビッグデータ化」

同日付 読売新聞 13版1面「医療ビッグデータ新法」