諦めずに、届ける

時は何も言わずに悲しげな微笑み投げるけど
この大空に国境の壁はないから
風よ 風よ 祖国の歌 聞かせて
風よ 風よ 母の歌 聞かせて

南こうせつ「国境の風」の詞の一部

今日の読売新聞の朝刊で目に止まった記事がありました。

政府は、北朝鮮にいる日本人拉致被害者に向けて放送している短波ラジオ番組「ふるさとの風」について、来年度から同時に三つの周波数で放送する方針を固めた。
(中略)
北朝鮮は番組の周波数に合わせて高出力の雑音を流し、番組を聴取できないようにしている。(中略)今年4月から、同時に二つの周波数で放送するようにしたところ、妨害を受ける時間の割合が約5割から約4割に減少したという。周波数を増やすことの効果が確認できたと判断し、来年度からは同時に三つの周波数で放送することにし、2017年度予算案に関連経費を盛り込む。

筆者は政府が拉致被害者向けのラジオを放送していることを知りませんでした。「ふるさとの風」は約30分の番組で、月曜日から日曜日まで放送、内容は一週間ごとに更新されます。日本や北朝鮮をめぐる状況や日本政府の取り組み、家族からのメッセージ、懐かしの日本の歌などを放送しています。「北朝鮮による日本人拉致問題」のサイトではこれまでの放送が聞けるようになっています。

実際に聞いてみると、北朝鮮人権侵害問題啓発週間に日本政府が主催したシンポジウムの内容や拉致問題解決に向けてのQ&Aなどが放送されていました。そして、冒頭紹介した南こうせつさんらが拉致被害者への励ましの気持ちを込めて作った「国境の風」や1973年に発売された海援隊の母に捧げるバラードが流れていました。放送の最後には北朝鮮に拉致され、日本政府が被害者として認定している12人の名前を読み上げています。

拉致被害者がこの放送を聞いたなら、どれだけの勇気が湧いてくることでしょうか。日本政府や家族が自分のことを見捨てずに、想っていることは救いになるはずです。

しかし、海を渡った北朝鮮に届かなければ意味がありません。政府の拉致問題対策本部に電話取材したところ、周波数を増やすことだけでなく、様々な取り組みを通じて北朝鮮にいる拉致被害者にメッセージを届けようとしていることが分かりました。北朝鮮にいる拉致被害者は当局に監視されているという情報から、放送を午後10時30という遅い時間からにしたり、聞き逃してもまた聞けるように1日3回放送したりしています。

筆者の知らないところで多くの努力があり、被害者やその家族ら多くの人が今も苦しんでいることをあらためて知りました。この思いが届き、いつか日本に帰ってきてほしい。そう祈らずにはいられません。

参考記事
12月19日付 13版 4面「拉致被害者向け ラジオ 3周波で」

参考資料
北朝鮮による日本人拉致問題(http://www.rachi.go.jp/