最低の選挙戦、最低の幕引き

史上最低の戦いとも言われた、米大統領選に決着がつきました。結果は、大方の予想を覆してトランプ氏の勝利。波乱から一夜明け、トランプ氏の勝因やクリントン氏の敗因など、様々な選挙の分析が行われています。また、トランプ大統領のもと、アメリカはどのように政策の舵を切っていくのか。日米の関係性はどうなっていくのか。経済連携は―。不安感がぬぐえない議論もこれから続いていくでしょう。そのような中ではありますが、今日あえて考えたいのは、当事国であるアメリカの今後です。

「アメリカの今後」とは、アメリカ国内の今後のことを指します。批判合戦に終始した選挙戦の災厄が、早速表れているようなのです。本日昼頃からの報道やSNSの投稿によると、アメリカ各地で反トランプデモが展開されているとのこと。デモに参加する人々は「Not Our President(私たちの大統領ではない)」と声を上げながら行進しています。クリントン陣営の本拠地があるニューヨークでは、道路が一時デモ隊で溢れかえるまでになっているようです。

選挙は多数決です。多数を占めたほうの意見が優先されます。しかしながら、多数派が少数派を無視することはご法度です。同時に少数派も多数派を無視することは許されないのではないでしょうか。この反トランプデモは、まるでトランプ氏が大統領になることを認めないような雰囲気さえ感じさせます。少数派が多数派の勝利を認め、多数派が少数派を尊重してこそ、選挙をした意味や、選ばれた人間に政治を任せる意味があるのではないでしょうか。

きれいごとに聞こえるかもしれませんが、それが民主主義なのだと私は思います。いまのアメリカは、選挙をしたのにもかかわらず民主主義から遠のいていくように見えてしまします。選挙戦から続いた候補の批判合戦は、結果として支持者同士の批判合戦やいがみ合いを加速させてしまいました。投開票は終わりましたが、両候補にはまだ仕事が残っていると考えてほしいです。自らの手で分断しかけているアメリカ社会を、再び一つに修復してから選挙戦を終えてほしい。最低の幕引きと言われないように、そう切に願います。

参考記事:各紙米大統領選関連記事