グローバル化とトランプ

 SNS上では、#IVOTEDというハッシュタグをつけて、投票を終えたことを伝えるツイートを見かけます。日本時間の9日朝から、米大統領選の投票が順次始まりました。米大統領選で共和党のトランプ氏が勝利する可能性について、米紙ニューヨーク・タイムズは日本時間9日午後1時45分時点で、「95%」と報じました。クリントン陣営が防火壁と位置づけていた州、例えばフロリダ州、アイオワ州、オハイオ州です。これらにおいて勝利したためです。「驚愕の大逆転劇」の見出しも掲げられています。

 開票直前まで、クリントン氏が優勢とは言われていました。しかし、結果はそうではありませんでした。無党派数からすると、トランプは劇薬ではあるが変化を身をもって示そうとする候補。一方で、クリントンは退屈な選択であるが現状維持。建前ではクリントン、でも本音はトランプ。トランプ支持を公言しない「隠れ支持者」が多いということがよくわかりました。

 私は今朝からクリントン氏が勝利するものと思い、投稿を書き進めていました。オバマ氏が大統領選で「チェンジ」といったようにアメリカ大統領を決める鍵は、変革といっても過言ではありません。アメリカ社会で、既存の政治家や制度がこれほどまでも不満を持たれているとは思っていませんでした。

 6日付の朝日新聞グローブでは興味深い特集を組んでいました。グローバル化に異議を申し立て始めた中間層や低所得層の人たちをめぐる動きに焦点を当てています。実質家計所得の中間値は1999年をピークとして落ち込み、まだその水準まで回復していない。所得上位の人々は潤っていますが、半分より下の人々は苦しい生活をしている。それがアメリカの現状です。グローバル化による技術革新に対応できずに雇用機会を国外流出するのではないかと先行き不安におびえる中間層の姿が伺えます。

 グローバル化の進展によって生じた格差や不平等に対して納得がいかないという面ではイギリスのEU離脱の時も同じでした。世界中で起きている問題の根は同じなのかもしれません。ただ確実に言えるのはもうこれ以上無視することができないことだけです。だからといってグローバル化をやめるべきではありません。

11月9日は冷戦時代に東西ドイツを隔てたベルリンの壁が崩壊した日なんですね(1989年)。2016年も歴史が動いた日に記録されそう。新たな壁がつくられないことを祈ります。

これは朝日新聞ヨーロッパ特派員のツイッターのつぶやきです。私も同じことを願うばかりです。

参考記事:
6日付けの朝日新聞グローブ187号<グローバル化という巨象>「グローバル化の象」と私たち
9日付け 各社朝刊、夕刊 「米大統領選」

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