トランプ勝利、TPPどうなるの?

 「トランプ候補が大統領になったら」。大ヒットした経済小説をもじり、市場では「もしトラ」と皮肉られていたそうです。私も同じですが、首相も多くの日本政府関係者も、クリントン氏勝利を予想していたことでしょう。一体どれくらいの人が「もしも」と現実味をもって考えていたのか。外務、防衛両省も新政権の人事をにらみながら関係構築を急いでいます。しかし、日本側にはトランプ氏との人脈は乏しいことに不安感は拭えません。

 TPPについてはどうなるのでしょうか。2015年10月に最終協議が行われてようやく参加国12国の大筋合意までこぎつけました。大統領選挙と同日に開票されたアメリカ連邦議会選挙では共和党が過半数を獲得しました。これにより、オバマ政権にあったような政権と議会の「ねじれ現象」は解消されます。日本では、10日にTPP承認案と関連法案を衆議院で通過させましたが、今やその発効が無効となるのも避けられそうにありません。

 クリントン氏もTPPに関しては前向きでなく、反対の意を示していました。ある程度予想ができたことともいえます。もう「もしも白紙に戻ったら」などと悠長に構えていられる状況ではありません。安倍政権は経済を立て直す案を練りなおす必要があります。「新三本の矢」の一つに「強い経済」として国内総生産600兆円を目標に掲げ、TPP効果に大きな期待を寄せていたのですから。たとえTPPが頓挫しても、世界の自由化の流れを逆戻りさせるわけにはいきません。

 どうすれば、自動車部品などを輸出しやすくできるのか。なぜ日本のコンビニが海外進出しにくいのか。日本のアニメをアピールしたくとも、海外では海賊版が横行しています。そんな中で著作権を守るためにどうすればいいのか。取り組むべきことはたくさんあります。

 未来を見通せる力があったらな。折々にそう思います。古代ギリシャ中部のデルフォイにはアポロン神殿があり、古代ギリシャの将軍は政治・外交の指針を神託に求めました。残念ながら、予言することは難しい。だからこそ、私たちは豊かな想像力を育んできたのです。政府も企業も農家にも、同じことが言えるのかもしれません。

参考記事:11日 各社新聞 「TPP承認案 衆院通過」関連記事