3枚の写真から見えてくる日中関係

 被災地である女川で東日本大震災の被害を伝える写真展に行ってきました。津波によって流されている建物、がれきの中で泣いている子供たち。どの作品も震災の被害を端的に訴えかけていました。このように、写真にはメッセージ性があります。新聞の1面に載ったものだけで、各紙、何を伝えたいのかが見えてくるものです。

 今朝の各紙1面を埋めたのは日中首脳会談でした。会談では日中関係改善に努力することを確認し、自衛隊と中国軍の艦艇や航空機の衝突を防ぐための「海空連絡メカニズム」の早期設置に向けて協議を加速することで一致しました。

 朝日新聞が1面に使った写真は、安倍首相と習主席が至近距離に立ち、ともにカメラ目線で写っています。2面に「日本、尖閣対立 悪化避ける」とあるように、会談が一定の成果を上げたことを取り上げています。

 とはいえ、南シナ海問題については、安倍首相が国際法に基づく平和的な解決を要請したのに対して、習主席は「(日本は)言葉と行動を慎むべきだ」と反発しており、どこまで関係改善が進むかは、依然不透明な状況にあります。

 そのことを端的に表しているのが、読売新聞と日本経済新聞が1面に掲載した写真です。両紙はほぼ同じアングルの写真を掲載しています。安倍首相と習主席が少し距離を置いて握手をしているものでした。習氏は笑っておらず、どことなく緊張感が伝わってきます。読売新聞の3面には「日中 笑顔なき握手」とあるように、依然として両者の間に溝が横たわっていることを伝えています。

 3紙を読み比べることによってわかることは何でしょう。今の日中関係には良好な側面と、解決の難しい課題があるということです。今回の会談では、その難しい問題については踏み込んだ話ができませんでした。国際平和のためにも、いずれ全紙に両首脳が笑顔で握手をしている写真が掲載されることを望みます。

参考記事:
6日付:「日中首脳会談」 各紙関連面