音楽は永遠に

ドラマティックに、力強く魅せる。

中村紘子さんの音楽に出会ったのは、私が中学生の頃です。生の演奏を聴くことはできなかったけれど、テレビやCDを通してこれまでたくさんの演奏を拝聴しました。その音から溢れるパッションに、強烈に心を揺さぶられました。

26日、中村さんが死去されました。若くしてショパン国際コンクールで入賞を果たし、日本を代表するピアニストとして、国内外で活躍されました。また、若手ピアニストの発掘や育成にも尽力されていました。追求していたのは、人の心に響く演奏。若手音楽家には「音楽を通して何を伝えたいの?」と問いかけていたようです。

自由闊達で、音楽にどこまでも熱い。ピアノとまっすぐひたむきに向き合う姿は、多くの人の心を打ちました。亡くなる前日まで「モーツァルトからラフマニノフまで、音色に新しい輝きを与える奏法を試したい」と語っていたようです。

また、クラシック音楽を広めたいと多方面にわたって活躍されていました。文筆家としても知られています。 雑誌「音楽の友」の連載を読むと、政治や海外暮らしの思い出を音楽に絡め、機知に富んだ語り口で言葉を紡いでいます。そんなパワフルでチャーミングな個性が、演奏にも表れていたと思います。中村さんが奏でた音楽は、これからも人々の心に生き続けるでしょう。

クラシック音楽というと一見、とっつきにくいと思われるかもしれません。けれども、皆さんにも一度、魂がこもった演奏を聴いてみてほしいのです。音楽は言葉を越え、国境を越えます。その一音一音に、音楽への愛と彼女の人生の足跡が詰まっています。

今、躍動感溢れるショパン『華麗なる大円舞曲』を聴いていると、語りかけてくる気がします。「音楽って楽しいんだよ」って。

 

参考記事:29日、30日 各紙中村紘子さん死去関連面

音楽の友 連載 ピアニストだって冒険する(中村紘子)