大国として国際法を守れ

以前、中国が人工的に島を作っているというニュースを見たときに、そんなことがはたして許されるのか、そんな風に感じました。なぜなら日本の沖ノ鳥島について、中国がいい顔をしていなかったと記憶していたからです。

安倍首相は15日、モンゴルのウランバートルで中国の李首相と会談しました。そこで安倍首相は南シナ海での中国の領土権主張を否定するオランダ・ハーグの仲裁裁判所の判決を受け、法に基づく紛争の平和的解決を求める日本の立場を伝えました。これに対して、李首相は日本が干渉すべきではないと反論し、双方の主張は平行線をたどりました。

今回の裁判は中国も相手国フィリピンも批准している国際海洋法条約に基づき、進められたものです。裁判では中国が領有権を主張する「九段線」について歴史的な権利を主張する法的根拠がないと述べ、権利を否定しました。これを受けて米国家安全保障会議のダニエル・クリテンブリンク・アジア上級部長は「最終的で、法的拘束力のあるものだ」と発言し、中国をけん制しました。同じように、韓国やオーストラリアなども判決の受諾を迫っています。しかし、当の中国は判決について「紙くずに過ぎない」と従わない姿勢を示しています。

各国が法律を互いに守れば国家間の紛争を避ける効果があるものの、国際社会では肝心の法に強制力がありません。ルールを破る国が出てきたときには、根本的な解決にはつながらないことが国際法の弱みです。一番危険なのは、平和的解決ができずに、軍事的解決を図る可能性があるということです。今月も8日に中国は南シナ海で大規模な軍事演習を行っています。アメリカも無人潜水艇を南シナ海に配備するなど、すでに軍によるけん制は始まっています。

判決が南シナ海の解決につながらないのであれば、これまで各国が法を守ってきた意味がなくなってしまいます。まして中国は経済的にも軍事的にも立派な大国であり、世界に与える影響力は計り知れません。営々と築き上げてきた平和の秩序を乱さないためにも、しっかり判決を受け入れる「大国」としての度量を示してほしいものです。

 

参考記事:

16日付:「中国南シナ海問題」  各紙関連面