介護は「長男の妻」の仕事?

「法律科目で将来役に立つのは民法(家族・相続)だろう」。そう思い、授業を履修しました。その時に習った法律が、遠からず大きく変わるかもしれません。

「夫が亡くなった場合、妻の法定相続分は2分の1。子どもが2人ならば、それぞれ4分の1ずつ」。現在の基本ルールです。これを見直し、夫婦の結婚期間が長期にわたる場合、配偶者の法定相続分を3分の2に引き上げる中間試案を法制審議会の相続部会がまとめました。

このほかにも、自宅の所有者が死亡した場合に、残された配偶者に所有権がなくても、そのまま住み続けられる居住権を新設する方向が示されました。また、自筆遺言証書はすべてが本人の自筆である必要がありましたが、一部に限りパソコンでの作成を認めることが盛り込まれました。

先にあげたもののほかにも注目したい制度があります。現行法では相続の対象にはならない「子の配偶者」にも、遺産を相続した人対して金銭を請求する権利を認めるというのです。高齢化に伴い、相続にあずからない家族が介護や看病などで献身的な貢献をすることが想定されます。そのような人たちを保護しようというのです。

この制度は相続に関係なく、家族の介護を担ってきた人に配慮した仕組みで、評価できます。しかし、引っかかったのは、例として「長男の妻」が挙げられていることです。新しい制度をわかりやすく説明しようと、「『長男の妻』など相続人でない人が介護などで貢献した場合」としたのでしょう。しかし、「親の介護は長男の妻がする」という古い押しつけを感じてなりません。長男に金銭を請求できるようになるから、介護を任せっきりにしてもよい、というものでもないと思います。

制度を新しくするということは、社会の変化とともに窮屈になってきた仕組みをより使いやすくすることです。単に仕組みを変えて解決しようとするのではなく、根本にある問題にも目を向けて議論してほしいと願います。

参考記事:

22日付 朝日新聞朝刊(東京14版)「相続 配偶者優遇する案」3面(総合)

日本経済新聞朝刊(東京14版)「長く連れ添えば相続多く」38面(社会)