少子化対策 ―価値観を見直した抜本的な改革を(【連載】「静かなる有事」6終)

連載の初回(続く80万人割れ―忍び寄る少子高齢化社会)では、出生数が80万人を切り、さらに少子化が進む日本の現状を見渡しました。第2回(広がる非婚化・晩婚化)では、原因の一つである非婚化・晩婚化について考えました。連載の3回目(グローバルに進む少子化 ―カギはアフリカ?)では、日本から一旦離れ、世界に目を向け、4回目の(これまでの少子化対策)で日本政府が取り組んできた少子化対策を振り返りました。前回(少子化対策 ―自治体の取り組みは)は、地方自治体による少子化対策について、いくつかの事例を紹介しました。

こども家庭庁は、今月9日「こども大綱」で掲げた目標を一年間の具体的な計画に落とし込んだ「こどもまんなか実行計画」案を公開しました。児童手当の拡充など少子化に直接関係のある政策のほかにも、子どもの貧困対策などを盛り込んでいます。この計画は、今月中にも決定し、来月には政府の「骨太の方針」に反映される見通しです。

先月26日、読売新聞は『提言 人口減抑制 総力で』と題して、少子化対策に関する7項目からなる提言を朝刊1面に掲げました。提言を受けて、加藤鮎子少子化担当大臣は同日の記者会見で「少子化対策を総動員で行わなければならないという問題意識については、我々も軌を一にする」と述べました。今回は、この提言をもとに少子化対策はどうあるべきなのか考えていきたいと思います。

 

読売新聞社の提言7項目(4月26日付朝刊)

提言では、「少子化の要因は未婚・晩婚化、出生数の減少」としています。そして前者の未婚・晩婚化の要因を金銭面のハードルとしています。新婚に伴う引越し費用や住宅費用の負担を軽減するための「結婚新生活支援事業」がすでに各自治体で始まっていますが、年齢や所得の制限があり受給のハードルを上げています。こうしたことから、より受給しやすいよう制限を緩和することを提言では謳っています。

たしかに、金銭的な理由から結婚を渋る人たちにとっては、一定程度の効果はあるように思えます。しかし、未婚化の要因は、金銭面のハードルだけとも限りません。国立社会保障・人口問題研究所が、2021年6月に実施した「第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」では、「いずれ結婚するつもり」と考える18~34歳の未婚者が前回調査(2015年)から減少しました(男性:81.4%〈前回85.7%〉、女性:84.3%〈前回89.3%〉)。

さらに、「結婚したら子どもを持つべきか」との問いに対して、賛成する未婚者は、女性では67.4%から36.6%に、男性では75.4%から55.0%へ大幅に減少しました。未婚化には、こうした文化的、社会的な側面も強く働いているのではないでしょうか。

国立社会保障・人口問題研究所『第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)』

 

「結婚して子供を産む」という伝統的な価値観を前提とした少子化対策には一定の限界があるように思えます。現行の社会制度は、例えば扶養控除などを挙げればわかるように男性が家庭を築き、稼ぎ手として働くという「男性稼ぎ手モデル」を中心として構築されています。そのため、現行制度下で結婚支援となると金銭面のサポートが必要なのは明らかです。

しかしながら、多様な生き方が容認される現代ではそうした支援は一部の人にしか届かないのが現状です。3回目(グローバルに進む少子化 ―カギはアフリカ?)でも取り上げましたが、フランスでは2019年に生まれた子供の6割が婚外子となっています。そろそろ家族制度そのものを見直す時期が来ているのではないでしょうか。

読売新聞オンライン 2024年4月26日配信「人口減の抑制は総力で…若者・家庭を支える社会に[読売新聞社提言]」

日経新聞デジタル 2024年5月9日配信「初の「こども版骨太方針」 少子化具体策、月内にも決定へ」

 国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」

【連載】「静かなる有事」

出生数80万人割れが2年連続で続いた日本。少子高齢化への警鐘が乱打されてきたのになぜ解決しないのか。最終回の今回は、読売新聞社の提言をもとに少子化対策を考えました。