違法性?適切?不適切?避けるべき?

「書道は舛添氏の趣味でもあるが、政治活動にも役立っている。不適切とは言えず、違法でもない」

舛添氏が2011年に上海で購入した「シルクの中国服」(約3万円と約5000円)への報告です。「書道の際に着用すると筆をスムーズに滑らせる」ことができるそうです。たとえ書道が政治活動に役立ったとしても、趣味のために着る洋服くらい自分の給与で買うべきだと思います。

筆者も就職活動中、時間を潰すために入るカフェでの飲食代について親と相談しました。確かに面接までの時間を待つカフェは欠かせませんが、結局は自分が飲み食いしているだけ。アルバイト代で賄うことにしました。これが当たり前ではないでしょうか。

舛添都知事は6日、政治資金の私的流用疑惑について、調査を行った弁護士二人とともに会見を開き、調査報告書を公表しました。「会議費」とされていた千葉県内のホテル代や湯河原町の回転ずし店の飲食代など約114万円分は、不適切な支出として個人資産から返金すると表明しました。また、絵画や版画は購入点数が多いことから「趣味的色彩が強い」、書籍も「家族にために購入したとみられてもやむを得ない」とされました。これらは不適切な支出と認定されたものの、「政治活動と関わりがないとは言えない」とし、代金返却までは求められていません。ただ、計約315万円分の美術品は将来の寄付を前提に都の施設などで活用するそうです。

気になるのは、「不適切だが違法性はない」という言い回しです。今回「政治資金規正法」に照らして合法か違法かが調査されました。政治資金規正法では、政治資金の使い方について明確な基準が示されていないため、「違法性はない」と判断されたのです。ただ、違法でなければいい、ということではありません。法には触れなくても使い方がおかしい。それを「不適切」としています。

法を犯したかどうか問われるのは政治家です。都民にとって「違法かどうか」は関係ありません。使い方で適切さを欠くのならば、それだけで政治家としての信頼を失います。「家族旅行」のホテル代や大量の美術品は、精査しなくてもおかしいと思うのが普通の感覚ではないでしょうか。

今回の調査はあくまで違法性がないことを弁護士に証明してもらうための方便にしか見えません。また、冒頭にあげた「シルクの中国服」は本当に政治活動に役立ったのでしょうか。「不適切でない」と判断されたものの中にも疑問が残ります。

舛添氏は「生まれ変わった気持ちで都政にあたる」と辞任は否定し、「有権者の判断に任せたい」と述べました。しかし、選挙を待たずとも、有権者の声は耳に届いているはずです。

参考記事:

7日付 各紙朝刊 「舛添都知事、記者会見」関連面