いざ、決戦へ

米大統領選の民主党の候補者争いで、複数の米メディアは6日(日本時間7日午前)、ヒラリー・クリントン前国務長官が代議員総数の過半数を確保し、指名獲得が確実となったと報じました。しかし、対立候補のバーニー・サンダース上院議員は7月の党大会まで戦う姿勢を崩しておらず、党内の支持固めは難航する模様です。

 

二大政党の候補選びは予想以上に激戦となりました。すでに共和党ではドナルド・トランプ氏が指名獲得を確実にしているため、ようやくトランプ氏対クリントン氏の構図が固まりそうです。ここで二人の候補者をみていきたいと思います。

 

まずは、共和党のトランプ氏です。ビジネスマン出身の異端児といわれ、「イスラム教徒の一時入国禁止」や「メキシコ国境に壁を作る」など、排外主義の過激な発言で一躍、注目の的となりました。既成政治が招いた格差拡大や雇用喪失による有権者の不満をうまく取り込み、白人の労働者層の支持を得てトランプ旋風を巻き起こしています。その大躍進の背景には、視聴率をとるためにトランプ氏を集中的に取り上げたテレビの影響もあるようです。その勢いは衰えませんが、党内では人種差別とも受け取れる発言に反発も多く、結束は難しい状況です。

 

一方、民主党クリントン氏は二大政党で初の女性候補であり、華麗な経歴と知名度を誇ります。ビル・クリントン大統領のファーストレディを務め、オバマ政権では国務長官を経験しました。人権問題に積極的に取り組み、女性や子供、LGBTの差別解消にも尽力しています。下馬評では圧倒的優勢でしたが、既成政治への不信や公務での私用メールの利用問題が逆風となり、サンダース氏に苦戦を強いられました。富裕層寄りに見られがちな政治姿勢の転換も課題となっています。こちらも分裂した党内をどこまで立て直せるかがカギを握るでしょう。

 

気になるのは、日米同盟の行方です。クリントン氏はオバマ政権の「アジア重視」政策を受け継ぎ、同盟国との関係を重視する方向を打ち出しています。それに対し、トランプ氏は「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」を掲げて、孤立主義的な経済運営や外交政策を強調しました。在日米軍に対する駐留経費の負担を上積みするように日本政府に求め、応じない場合は撤退さえ示唆しています。実際に政権につけば柔軟な対応に変わる可能性もありますが、警戒が必要でしょう。

 

政治の経験ない異端児トランプ氏が破竹の勢いで大国のトップに上り詰めるのか。それとも、経験豊富な正統派クリントン氏が初の女性大統領に就任するのか。世論調査によると支持率はほぼ互角となっていますが、双方の好感度は共に低く、「嫌われ者同士の対決」とも揶揄されています。世界に大きな影響を与える大国の決戦を面白いと感じるのは筆者だけではないでしょう。両候補の突出したキャラクターが目を引くからかもしれません。

 

どうしてもイメージばかりが先行しがちですが、大事なのは政策であり、一貫性のある政治です。本選に向けて、お互いの悪口大会ではなく、世界に目を向けた建設的な議論に期待したいと思います。投票日は118日。私たちも信頼できるメディアの報道を通して、政策の本質を見極め、移り変わる世界の中で大国の在り方を考えていきたいものです。

                                                                                                            

参考記事:8日付 各紙米大統領選挙関連記事