離婚後の共同親権導入は悪なのか 「選択肢の拡大」がカギとなるのでは?

以前あらたにすで「共同親権」について取り上げ、どのような制度なのか、各国は親権をどのように扱っているのか、などをまとめました。本稿では、その後の進捗状況や筆者の考えを中心に、共同親権についてより深く考えていきます。

 

■共同親権とは

まず共同親権とは、離婚後の父母双方に親権を認めることです。また「共同親権の導入」とは、「(父母が離婚をするとき)その一方を親権者と定めなければならない」とする民法819条を改正し、離婚後の父母双方が親権を得られるようになることを差します。

これが導入されると、離婚する場合に夫婦の協議で単独親権か共同親権を選べるようになり、合意できなければ家庭裁判所が親子関係を考慮して判断します。DVや虐待が認定されるなど「子の利益を害する」と判断された場合には、共同親権の対象外としました。したがって、離婚した父母間に未成年の子がいても、すべてが共同親権となるわけではありません。

 

■共同親権導入のメリット・デメリット

ここで、共同親権導入について考えられるメリット・デメリットを挙げていきます。

【メリット】

・多様化する家族のあり方に適応する

・父母双方が親権者となることを選択する余地を認める

・共同親権を認める諸国と足並みをそろえることができる

 

【デメリット】

・父母どちらかがDVや虐待などの加害者である場合、共同親権を悪用される恐れがある

・子に関する決定が遅れる

・DVや虐待は閉鎖的な空間で発生するため、認定や対応が難しい

 

民法改正案は、8日国会に提出され、14日衆院本会議で審議入りしました。今国会で成立すれば2026年度までに施行される見込みです。

導入に向けた議論が進むにつれて、反対の声も広がっています。最も優先されるべき「子の利益」が損なわれるのではないか、という心配から、筆者も共同親権導入は慎重に進めるべきだ、と思っていました。しかし、制度が導入されたとしても、離婚したすべての家庭で共同親権となるわけではありません。それに、「子の利益を害する」と判断された場合は対象外となります。虐待・DVからの避難など「窮迫の事情」があれば、単独で親権を行使することが可能です。確かに、子の利益について心配は残りますが、必要な対処策は講じられるのです。

また、共同親権導入のメリットのうち、「父母双方が親権者となることを選択する余地を認める」に筆者は注目しました。現在、同性婚や選択的夫婦別姓の法制化を求める意見が広がっており、その理由として頻繁に挙げられる「選択肢の拡大」が、共同親権導入においてもメリットとなるからです。「選択肢の拡大」はこれまで阻害されてきた人々が利益を享受することに繋がります。同性婚や選択的夫婦別姓の法制化を望む理由として「選択肢の拡大」を挙げる以上、「離婚後の父母双方に親権を認める」という選択肢も同様に扱うべきなのではないでしょうか。

ただし、子の利益が損なわれてはなりません。家庭を考えるうえで、子は最も重要な要素であるからです。取りこぼしのないDV認定や、父母の意見が一致しない場合の家裁による迅速な対応など、課題は山積しています。個別事案に適した対応をとるために、家裁の人員を増やす必要もあります。考えられる不利益に対処しながら、共同親権導入に向けて前向きに検討していくべきなのではないでしょうか。

 

 

あらたにす関連記事

・2月2日付 離婚後の共同親権導入へ 賛否両論の声

 

参考記事

・14日付 読売新聞オンライン 「共同親権」導入、小泉法相「子の利益の観点から重要」…民法など改正案が衆院審議入り

・14日付 日経電子版 離婚後の共同親権法案、衆院で審議入り

・8日付 日経電子版 離婚後の「共同親権」導入 運用・支援策を国会で議論へ

・8日付 日経電子版 離婚後「共同親権」導入へ改正案が閣議決定 有識者の見方

 

参考資料

・松田亘平(2023)「離婚後共同親権の議論状況」『Libra : The Tokyo Bar Association journal / 東京弁護士会広報委員会 企画・編集』23巻, 9号, p.12-16