離婚後の共同親権導入へ 賛否両論の声

法制審議会(法相の諮問機関)の家族法制部会は、離婚後の父母双方に親権を認める「共同親権」の導入を柱とする要綱案をまとめました。政府はこれをもとに、今国会に法案を提出する見通しです。

 

■日本の現状

現在日本では、父母のうち一方を親権者と定めなければ離婚できません。

(筆者作成 参考:民法 | e-Gov法令検索)

今回の要綱では、このルールの見直しを提言しました。

親が離婚した未成年者は、毎年約20万人に上ります。そのうち9割近くの家庭では、母親が親権者となっています。筆者もひとり親家庭で、高校卒業までは親権者である母親、祖母と生活していました。周りにも、ひとり親家庭、特に母子家庭のクラスメイトは多かったです。

 

■共同親権とは

離婚後、父母の双方に親権を認める「共同親権」が導入されると、両者が合意すれば共同親権を選択することができます。合意できなければ家庭裁判所が親子関係を考慮して、共同親権か単独親権かを判断します。「子の利益を害する」場合には、共同親権の対象外としました。したがって、離婚した男女に未成年の子がいたとしても、すべてが共同親権となるわけではありません。

 

■「子の利益を害する」場合

具体的な事例は以下です。

①(虐待など)父または母が、子の心身に害悪を及ぼす恐れがある

②(DVなど)父母の一方が、他方から暴力や心身に影響を及ぼす言動を受ける恐れがある

父母どちらかが、他方または子、もしくはその両方の心身に害悪を及ぼす場合「子の利益を害する」とされます。これらのときは、虐待などによる被害が継続することを防ぐために、共同親権を選ぶことはできません。

 

■国民の意見

共同親権の導入について、賛否両論があります。法務省が実施したパブリックコメントでは、個人の約3分の2が反対でした。反対の声の背景には、虐待などへの恐れがあります。父母どちらかがDVや虐待などの加害者である場合、共同親権を悪用する危険性があるのです。確かに、家庭裁判所が「子の利益を害する」と認定すれば、双方が合意しない場合でも単独親権となります。しかし、そのためにはDVや虐待が認定されなければなりません。家庭内で起こる暴力は外から見つかりにくく、心理的な虐待であれば証拠が残ることも少ないでしょう。児童相談所や家庭裁判所の負担が増加し、事務処理の許容範囲を超えてしまいかねません。

 

■海外の現状

2019年に国連「子どもの権利委員会」が、離婚後の共同教育を認めるための法改正を日本に求めました。

法務省の調査によると、単独親権のみが認められている国は日本以外ではインドとトルコしかありません。多くの国では単独親権だけでなく共同親権も認められています。共同親権を認めている国の中でも、差異があります。

①原則が共同親権、裁判所の判断等がある場合、例外として単独親権

②原則が単独親権、共同親権を選択することも可能

③父母のいずれもが、それぞれの親権を単独で行使することが可能。

親権の選択方法については、様々なパターンがあります。この法案が通ると、日本では②の形で共同親権が認められることになります。

 

家族法制の改正は、成立すれば77年ぶりとなります。国際化が進む現在、国外と足並みをそろえることが求められています。しかし、無理に進めてよいのでしょうか。日本特有の文化があるように、日本特有の問題もあるはずです。それが家族に関することならば、余計日本の家庭制度に合う措置を取らなければなりません。

 

 

参考記事:

・1月31日付 日経新聞(12版)3面 「離婚後の共同親権導入へ」

・1月31日付 読売新聞(14版)2面 「離婚後の共同親権導入」

・1月31日付 朝日新聞デジタル 1月31日 ニュースの要点:朝日新聞デジタル (asahi.com)

・1月31日付 朝日新聞デジタル (いちからわかる!)親権とは?:朝日新聞デジタル (asahi.com)

・1月31日付 朝日新聞デジタル (時時刻刻)共同親権の導入、探る「子の利益」 法制審の要綱案:朝日新聞デジタル (asahi.com)

 

参考文献:

民法 | e-Gov法令検索

参議院常任委員会調査室・特別調査室 立法と調査 2020. 9 No. 427