ネットと現実の境

 

「ネット上の性格と本当の性格が全然違う」

「なんですぐにLINE返してくれなかったの」

といったこと、読者のみなさんも経験したことがないでしょうか。私の身の回りでも「既読スルー」、「アカウントをブロック」といったネットでの行動が、現実世界で思わぬトラブルになることが多々あります。ネット世界と現実世界の境界が見えづらくなっている現代社会ならではの問題でしょう。

先日、アイドル活動をしていた大学三年生の女性が、イベント開催予定だった雑居ビル付近で、男に刃物で何か所も刺されて今もなお意識不明の重傷を負ったという事件がありました。犯人の男は、もともとその女性のファンでした。しかし、Twitter上で何度もメッセージを送ってこられるのに嫌気がさし、ブロックをしたことで殺意を強めたということだそうです。

この事件の影響を受けて、多くの女性アイドルグループが握手会などのイベントを控えるなどの対応に追われています。しかし、私はこの事件、芸能界だけの問題ではないように思えます。

SNSの発達によって、友達と離れていても会話ができるようになりました。一方で、友達と会話ができるツールで、普段会話することなんてできない様々な人と会話もできるようになりました。一度もあったことのない人と親密なやり取りをできるようになり、とても世界が広がったように思えます。そして、ネットで知り合った人と現実でも会えるようになり、ネットと現実の世界の境はどんどんなくなっているように思えます。

ただ、このことが、本当の相手との距離感を見えづらくしてしまっていると私は思います。先ほど取り上げた事件も、Twitterで会話ができることが、本当に親密な関係になったと勘違いを引き起こしてしまうのではないのでしょうか。ネットでの関係がどこまで本当のものなのか、改めて考える必要があるのではないでしょうか。

 

参考記事:

23日付 朝日新聞 東京14版 朝刊 39面 「贈り物返されて憤慨」

日本経済新聞 東京14版 朝刊 35面 「贈り物返されて殺意」

読売新聞 東京14版 朝刊 33面 「贈り物 返され恨む」