今や日本を代表する高級スキーリゾート地となった北海道ニセコ。
「ジャパウ(Japanとpowder snowを掛け合わせた造語)」とも呼ばれる上質なパウダースノーを目当てに大勢の外国人観光客が集まっています。
「バブル現象」と言われるほどの活況を呈し、連日メディアにも取り上げられているニセコ。
その現状をレポートします。
◯外国のような街並み
今月9日、ニセコエリアの中心地であるひらふ地区(倶知安町)を訪れました。
スキー場に程近い坂の上に高級ホテルや大型のコンドミニアムが立ち並び、欧米のスキーリゾートのような街並みが広がります。
標識や看板の多くは英語表記。
通りですれ違う観光客も、7〜8割は外国人スキー客でした。
昼食をとったひらふ坂沿いのラーメン屋でも、聞こえる会話はほとんどが英語です。店員も慣れたように英語で注文をとっていました。
日本にいながら海外にいるような気分になるニセコ。日本人でスキーもしない筆者にとっては肩身が狭くなるほどの、異質な空間が広がっていました。
◯高級化するニセコ
外国人観光客の増加を受け、値上げや高価格帯の品揃えが進んでいます。
ひらふ十字街にあるコンビニ「セイコーマートニセコひらふ店」。店内には1万円を超えるウイスキーやワインなど、札幌市内の店舗では見られない商品が並んでいます。
ひらふ坂沿いの飲食店では1万円超えのランチセットが、広場に並ぶキッチンカーでは4000円のカレーが販売されるなど、強気の価格設定も至る所で見られました。
◯進む開発、変わる景観
土地の値段も上がっています。
国土交通省が公表している「令和3年度地価公示」によると、住宅地と商業地の上昇率1位はいずれも倶知安町でした。コロナ禍の影響で全国平均が下落に転じたなか、20%を超える高い上昇率を維持しました。
背景にあるのは、リゾート開発への期待です。
近年、ニセコではコンドミニアムの建設が相次いでいます。
ひらふ地区では、22年に「雪ニセコ」、23年に「MUWA NISEKO」といった大型のコンドミニアムが完成しています。
オーナーは分譲マンションのように住戸を所有し、使わない期間はホテルとして貸し出すことも可能です。長期滞在用に加えや投資先としても人気があります。
◯広がる影響
ひらふ地区の散策後、車で15分ほどの距離にある倶知安駅周辺を訪れました。
一見すると道内の他の地方都市と変わらない静かな街ですが、街中を歩くと明らかに異なることが分かります。
スーパーでは1万円以上するワインやタラバガニが一般の商品とともに並び、外国人客も多く見かけました。
アルバイトの時給も高く、大手牛丼チェーンの時給は日中が1500円、深夜は1900円となっていました。札幌市内に比べて500円ほど高い数字です。
「バブル」の影響はこのエリアにも及んでいると感じました。
外国人や外国資本の流入で変貌を遂げるニセコ。
その姿は日本の観光地の将来を映し出しているのかもしれません。
参考記事:
3月7日付 日本経済新聞朝刊2面(総合1)「迫真 惑う 観光大国ニッポン4 「みんな山に行ってしまう」
参考資料:
国土交通省 令和3年地価公示「住宅地の変動率上位順位表(全国)」
国土交通省 令和3年地価公示「商業地の変動率上位順位表(全国)」