経済成長と景観保全のバランスを取るためには

「昔に比べたら、観光客ばっかりで神聖な雰囲気はなくなってきちゃってるよね。スターバックスもできちゃって。」

広島旅行で訪れた食事処の女将さんに、明日厳島神社に行くと話すと、返ってきた言葉。観光客が増加、それに追随して観光ビジネスも盛んになり、宮島の持つ自然豊かな雰囲気は徐々に薄れていっているというのです。

天気が曇りとすぐれなかったのもあるかもしれませんが、確かに写真などで感じた荘厳さはあまりなく、ほんの少し期待外れでした。また、外国人観光客が多く、お土産屋さん、食べ歩きグルメを売るお店などが軒を連ねる光景に、テレビなどで聞く「インバウンド効果」を間近に感じました。

古くからの歴史や景観が素晴らしいから、観光地として有名になる。すると、来訪者が増え、観光業が盛んになる。盛んになると、元々の景観が失われたり、オーバーツーリズムの問題が生じたりする。「風吹けば桶屋が儲かる」でしょうか。多くの観光地が抱えるジレンマです。

リゾート地として名高い長野県の軽井沢や北海道のニセコでも、開発により景観が守られなくなる懸念があります。筆者も大学3年の時に、軽井沢を訪れたことがあります。「軽井沢」と聞くと、白糸の滝やキリスト教会など、自然が溢れ、西洋の異国情緒が残る高級避暑地というイメージを持っていました。もちろん、そのような場所も沢山あるのですが、高級ブランドが数多く入るアウトレットモールや、リゾート会社、デベロッパーによる商業施設など、開発の跡が多く見られ、「これ、もう東京とさほど変わらないのでは」とげんなりした記憶もあります。

東急不動産が旧軽井沢地区に建設を計画しているホテルに関して、地域の景観が守られるのか、近隣住民の懸念が高まっていました。去年の12月には、住民が県庁に景観法に基づいた審査を求める署名と要望書を提出しています。

長らくコロナの影響を被ってきた観光業にとっては、今のインバウンドは追い風になりますが、その土地の歴史や景観、暮らしている住民の思いも忘れてはいけません。この2つが載った天秤がつり合ってこそ、持続可能な観光地になるのでしょう。

 

参考資料:

旧軽井沢の歴史と景観を守る会公式HP

 

参考記事:

朝日新聞オンライン、2月23日、「星野リゾート代表、ニセコバブルに警鐘 リフト券値上がり長時間待ち

NHK、2023年12月4日、「軽井沢のホテル建設計画で住民が県に要望書

毎日新聞、2023年2月26日、「軽井沢の景観、守られるのか 大型ホテル建設計画に住民が抱く懸念