一向に上がらないEV普及 伸び悩みの背景は

ここ数年、コンビニエンスストアやショッピングモール、サービスエリアなど様々な場所でEV(=電気自動車)向け充電スポットの整備が進んでいるように感じます。昨年、開催されたモビリティショーにおいても国内の各企業はEVを中心に展示し、世界のEVシフトの流れに乗っていました。それが、充電スポットの拡充といったインフラ整備を進めた要因でしょうか。しかし、インフラ整備が整うだけでは、その後のEVの国内普及は、いまいちだと思います。ショッピングモールの充電スポットを見ても、とまっているのは、ハイブリッド車やガソリン車が多く、EVが充電しているのを見たことはありません。

東京電力エナジーパートナーの調査によると、23年上半期のEVの販売台数は2万5807台で、全販売台数(普通自動車・軽自動車)に占める割合は2.38%にとどまっています。22年の1.42%(3万1592台)と比べると、売れ行きは伸びてきてはいます。しかし、「普通自動車と比べると高い価格設定」や「燃費やバッテリーの持ちなど性能面の見劣り」といったことが伸び悩みの原因となっているといいます。

また、バッテリーは比較的重く、小型自動車をもう一台載せているような感じだと聞いたこともあります。タイヤへの負荷が大きくなることで交換の頻度が多くなり、ガソリン車と比べると費用がかかるという結果も出ています。

国内では、所得の落ち込みが問題となっています。こうした中で、わざわざハイコストのEVに手を出す人がどれだけいるのか。35年の電気自動車など電動車100%の普及へ向けてはまだまだ険しい道のりとなりそうです。

EVの普及率が高かった海外でも、ハイブリッド車(HV)への戦略転換が見られ、EV車の販売が停滞し始めているといいます。17日の朝日新聞でも、アメリカでのHV人気の背景として、一般の人にとって手ごろな価格を指摘しています。こうした影響を受け、アメリカのメーカーはHV需要に応える動きを見せ始めています。一方で、日本のスズキは真逆の戦略をとっています。インドで新工場を設立するなど、EVをさらに推進していくと日経新聞で紹介されていました。EVの将来性を重視していきたいからだといいます。

国内外の自動車メーカーにとっては、売れ行き好調なHVにするかあるいは将来性をにらんでEVシフトに走るか、悩みの種となっているようです。

 

【参考記事】

28日付 日経新聞朝刊(12版)14面(ビジネス1)「スズキ、EVもインド推し」

17日付 朝日新聞朝刊 7面(経済)「燃費・価格お手頃、米でHV人気 伸び悩むEV、充電設備不足・航続距離弱点 戦略転換するメーカーも」

【参考資料】

東洋経済オンライン「『ハイブリッド車』やけに復活している2つの理由」

EVDAYSby東京電力エナジーパートナー「【2023年最新】EVの普及率はどのくらい?日本と世界のEV事情を解説」