テキストコミュニケーションにより一層の警戒を 発信側が意識するべきことは

皺ひとつない紙を前に母親は「この紙に悪口を言ってみて」と子供に伝えます。子供が悪口を言うたびに紙はクシャクシャに縮んでいきます。謝罪の言葉を伝えていくと、縮んだ紙は少しずつ広がり、元のサイズの大きさに戻りましたが、以前の皺ひとつない当初の状態ではありません。

「この紙は、元通りになった?」

しわくちゃになった紙を前に母親が子供に尋ねます。子供は「いいえ」と答え、母親は「これがいじめをしてはいけない理由よ」と語り掛けました。

SNSで見かけた、とある家庭の「いじめをしてはいけない理由」の教育方法だそうです。

紙が縮まる理由を悪口に例えることで、人の傷付く心を可視化しており、非常にわかりやすい教え方だと思いました。一方で「悪口を伝えれば人を傷つけてしまうのも当然なのだから、気をつけるのも当たり前だ」と、見かけた当初はあまり気にとめていませんでした。

先日、漫画家の芦原妃名子さんが亡くなったという悲しいニュースが耳に入りました。ニュースが流れる前後、SNS上ではドラマ版の作品内容を巡り、物議が醸され、攻撃的な言葉が呟かれていました。原作は、30代、40代のオトナが抱える「現実」とそれでも追い求めてしまう夢や恋をリアルに描写している人気作品です。

世の中は、「人を傷付けるような言葉を伝えてはいけない」ということを理解している人が大多数だと思いますが、匿名性のあるものや顔が見えないSNS等のツールでは、その認識が少し甘くなってしまっていると感じています。

ネットを見ていると筆者も「確かに!」と納得することや「これはおかしい」と思うことがありますが、それだけで反応することがどのような影響を与えるのか、この状況で自分の意見を伝えることが適切なのかということも考えなければいけません。

また、文字で伝えるテキストコミュニケーションの場合、対面や音声を通しての会話よりも冷淡に伝わりやすいということを理解して、一層言葉選びを慎重にすべきだと思います。このことは個人にとどまらず、企業などの組織まで、社会の全てが改めて意識すべきことだと感じています。

最後に心に響く素敵な作品を残してくださった芦原妃名子さんに感謝とご冥福をお祈りいたします。

 

参考記事:

30日付日本経済新聞夕刊11面「芦原妃名子さん、栃木県内で死亡 漫画『セクシー田中さん』」

30日付読売新聞朝刊(東京14版)30面「芦原妃名子さん死去、『セクシー田中さん』」

30日付朝日新聞朝刊(東京13版)26面「芦原妃名子さん死去 漫画『セクシー田中さん』」