2024年に入り2週間が経ちました。各社の新年特集をまとめました。
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毎年、新聞社は新年に合わせて注目する話題や切り口で特集を組み、読者に新しい視点を提供しています。24年は波乱の幕開けとなりました。元旦から能登半島地震によって、多くの家屋が倒壊し、今なお避難を余儀なくされている方が多数いらっしゃいます。2日には羽田空港で日本航空の旅客機と海上保安庁機が衝突する事故が発生しました。自民党の政治資金問題についても未だ全容が見えない段階です。
今年は、どのような年になるのでしょうか。新聞各社は年始に合わせて、これからの1年やその先を展望する連載を組みます。昨年をどのように総括し、社会が、世界が変化していくのか、切り口を見れば、紙面の方向が見えてきます。
今回は、朝日新聞、日経新聞、読売新聞の新年特集を比較して、24年以降の社会を考えます。
朝日新聞 ―「8がけ社会」
朝日新聞が着目したのは深刻化する「人手不足」です。40年には1100万人の労働力が足りなくなるとの予測を元に、現在の労働人口の8割で社会を動かしていくにはどうすべきか、連載を通じて考えています。
そもそも、この人手不足の背景には、少子高齢化があります。現在日本の合計特殊出生率は1.26と先進国の中でも極めて低水準です。しかし、この少子高齢化は、ずいぶん前か予測されていました。
人口減少に対応する社会構造へ変革することがかねてから求められてきたのに、十分な対策ができていません。物流の2024年問題では、トラックドライバーの数が14万人不足するとの試算もあります。
日本は人口減と人手不足の二正面作戦を迫られます。しかし、それは、災害などとは違いあらかじめ備えておくことが可能です。その意味で「変えられる未来」なのです。
日本経済新聞―「昭和99年」
日本経済新聞は、昭和が始まって99年目だということにちなみ「昭和99年」と題して連載を始めました。23年は、コスト高によって物価が上昇した年でもありました。その分、名目の賃金は全国的に上がりましたが、物価上昇に見合った実質賃金のアップには至っていません。
実質的な賃金が上昇すれば、好循環が生まれ、およそ30年ぶりの好景気になるかもしれません。また、年始から日経平均株価が続伸しており、昨日(15日)には一時3万6千円をつけ33年ぶりの高値となりました。その意味で今年は、日本経済の分水嶺だと言えるかもしれません。
バブル後の日本経済は大きく停滞しました。昭和的な価値観を引きずり、前例踏襲主義が新たな技術の開発やアイデアを妨げてきたことも指摘されています。今年は、そんな「昭和」から脱却できるのか。日本が試されています。
読売新聞―「(語る)新年展望」
読売新聞は、自民党、立憲民主党、日本維新の会、公明党、共産党、国民民主党の党首にインタビューし、「新年展望」として、連載記事を掲載しています。
昨年末には、「政治とカネ」の問題が顕在化し政治への不信感が高まっています。1月1日付の朝刊で、岸田文雄首相は「政治の信頼回復」が必要だとしています。言葉の通りパーティ券問題など政治資金についてしっかりと実のある対策が期待されます。
対する、野党第一党立民の泉代表は、次期衆院選で150議席以上の目標を掲げ、支持獲得へ向けた決意を表しています。同時に教育無償化などの共通政策を通じて野党をまとめ、政権交代可能な政治を目指す姿勢です。
各政党の党首に加えて、財界など影響力のある方からのインタビューもこれから続くようです。
1日付 朝日新聞朝刊(東京14版)一面「(8がけ社会:1)縮小の先に その未来は幸せか、希望は言葉の中に 作家・多和田葉子さん」
1日付 日経新聞朝刊(東京14版)一面「昭和99年ニッポン反転(1)解き放て」
1日付 読売新聞朝刊(東京14版)政治面「[語る]新年展望(1)やるべきは 政治の信頼回復 首相 岸田文雄氏66」