新聞配達の今〜新聞が届かない地域も〜

20年前と比較すると一般紙の総発行部数が約半分に落ち込み、「新聞離れ」が進んでいる一方で、まだ新聞を生活の情報源としている購読者がいます。

しかし近年、過疎化が進む山間部の地域では新聞配達の要員が確保できず、配達を取り止めざるを得なくなっているケースがあることをNHKのニュースで知りました。

和歌山県みなべ町の中心部にある新聞販売所は全国紙と地方紙合わせて6紙を扱い、50km離れた山間部にも届けています。一軒ごとの距離が離れているため、街中の配達と比べて3倍の時間がかかるそうです。2日に1回はガソリンを入れる必要があり、燃料費が高騰する中では厳しいと配達員は悲痛な声をあげています。

筆者の知り合いで広島県の山間部で新聞配達の経験がある人も、「配達先の家は見えるのに道が狭かったり、複雑だったりで、どうやったらたどり着けるのか分からない時がある」と嘆いていました。また、こうした地域の配達員の多くは高齢者であることが多く、体調の変化で急に配達ができなくなったりすることもあり、販売店も配達員も、そして購読者も困っている状態です。

和歌山県日高川町美山地区では400部以上の購読がありましたが、すでに去年9月から新聞配達が廃止されています。郵送という形で届けられることになりましたが、郵送代は月に約1000円かかるため多くの住民たちは郵送を選びませんでした。さらに、土日の新聞は当日には届かず月曜日になるのです。この地区で商店を営む今西多美子さんは、「新しく聞くって書いて新聞やのに古く聞くや。3日前の新聞は読みたくない」と話します。新聞を生活の情報源として大切にしている人の元へ新聞を届けることが難しくなっています。また、現在はインターネットでいち早く情報を入手できるため、そちらへ移行する人も少なくないでしょう。そうなってしまえば更なる「新聞離れ」が進んでしまいます。

父の鹿児島の知人によれば、鹿児島県と宮崎県に販売エリアを置く南日本新聞が取り組んでいることがあるそうです。12月28日付の南日本新聞の広告欄には「野方、岩川西部で新聞の営業所を経営しませんか」という広告が掲載されていました。現在、山間部への配達の問題の1つとして配達員がいても配送拠点がないこともあります。そこで南日本新聞は山間部である人口2000人ほどの で新聞の営業所を経営する人を集めています。

日本郵便が、新聞をはじめとする第三種郵便物については郵送料を安くして、購読者の負担軽減を図ってはいますが、先月封書とはがきの郵便料金を値上げが検討され、こちらは来年秋ごろから実施の見通しです。第三種郵便物は対象になっていませんが、郵便事業そのものが厳しくなっているため先行きは明るくなさそうです。

各新聞社のどの地域の人にも届けたいという思いと購読者の読みたい気持ち。両者を叶えるためにも、早急に解決案を見つける必要があります。

 

参考記事:

・朝日新聞デジタル、2023年12月19日付、「値上げへ 封書110円、はがき85円」

・NHK、2023年10月23日付、「新聞配達とりやめ 過疎化進む山あいの地域で相次ぐ 和歌山」

・NHK、2023年10月26日付、「新聞が〝届かない〟」

・南日本新聞、2023年12月28日付、広告「野方 岩川西部で新聞の営業所を経営しませんか」

 

参考文献:

・日本郵便株式会社、2019年10月、「第三種郵便物利用の手引」

・日本郵便株式会社、「第三種郵便物の料金計算」