最近、街へ足を運ぶと高齢者の姿を頻繁に見かけるようになりました。よく通う図書館、スーパー、更には観光地にもシニア層の方々が増えているように感じます。地域面に載ったニュースを裏付ける光景です。
記事では「シニア世代が地方から東京へと移り住む動きが続いている。昨年、他道府県から東京に移った65歳以上の人は1万5千人を超える。高齢者のニーズをつかもうと、高度成長期にできた古い団地を高齢者向け住宅に改築する取り組みも進む」と伝えています。
ではなぜ、近年になって東京に移住するシニア層が増加したのか。地方で暮らしていると、病院や買い物に行くにも車で行かなければならないといった不便さに参ってしまうことが挙げられるでしょう。それに比べ、東京ではそういった施設のほとんどが徒歩圏内に位置しているうえ、ユニバーサルデザインやバリアフリーの設備が充実しています。このため、利便性が高く、安心して生活できます。
記事に目を通して更に驚いたのが、65歳以上の高齢者の多くは高齢者向け住宅に住み、子ども世帯と離れて暮らす事例が増えていることです。私が小学校時代に住んでいたフィリピンでは、「家族第一主義」という考え方が古くから根付いているため、親子二世代さらには孫を含めた三世代が一つの屋根の下で暮らすのが習慣となっていました。そうすることにより、常にコミュニケーションが図れ、思い出を共有し合うことで絆も深められます。
日本では、高齢者の孤独死が年々増え続けています。家族と離れ離れになることで関係が気薄になり、孤立状態に陥ってしまうことが主な原因です。孤独死を減らし、幸せな老後生活を送ってもらうためにも、若い世代が積極的にそういった施設に会いに行き、一緒に出掛けるといったコミュニケーションを密にすることが肝要です。その意識が広まることで、東京が近い将来、元気な高齢者とその家族が幸せに暮らしていける一段と魅力的な街に変わることを願っています。
5月5日付 東京 東部 14版 朝日新聞朝刊 「シニア 東京移住増」