こどもの日、「こども」だけでない子たちへも

「屋根より高い鯉のぼり~、大きい真鯉はお父さん~、小さい緋鯉は子供たち~、おもしろそうに泳いでる~」

暦の上では夏。今日は「立夏」です。筆者の住む埼玉県では、昨日真夏日を記録し、連日の暑さにおびえるばかりです。そんな今日も青空の中を鯉たちがおもしろそうに泳いでいます。5月5日、「こどもの日」。「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する」と国民の祝日に関する法律に書かれています。

ところが、主役であるはずの子どもたちは、年々少なくなっています。「こどもの日」に合わせて、総務省が4日発表した15歳未満の子どもの推計人数は、前年より15万人減って、1605万人でした。これで35年連続の減少です。また、総人口に占める割合は12.6%と過去最低となりました。

減り続けているからこそ、今いる子どもたちを大切にしなければなりません。しかし、経済的に苦しい家庭の子どもは6人に1人。最貧困層と標準的な層との格差を国ごとに分析したユニセフの報告書では、41ヵ国のうちで8番目に大きいそうです。筆者も、高校受験のときに、その差を感じました。中学の勉強についていけなくなり、高校を受験することなく、就職先を探そうとする生徒。公立高校に落ちても、私立高校には行けないからと、確実に受かるために志望校のランクを下げる生徒もいました。その一方で、大学まで行くことが当たり前だと思っている生徒もいます。15歳の時点でこれほどの差があります。

「貧困の連鎖から抜け出すために、教育の力がカギ」。一般的にそう言われます。教育は一番格差の出やすいところだからです。たとえば、小学校で英語が正式な教科になれば、小さいころから英会話教室に通ってきた子どもと、何も経験したことのない子どもでは、スタートラインが大きく異なります。小学校での差が徐々に広がり、義務教育後の高校や大学の進学に大きく響いてきます。こうした差を埋めようにも、小学校や中学校に通う子どもが抱える問題は複雑にからみあっています。ある1点だけを取り出して対策を打っても連鎖からは抜け出せないでしょう。

経済的に厳しい子どもたちに勉強を教える学習支援事業が行われていますが、義務教育を受ける児童生徒が対象のものがほとんどです。中学を卒業したあとこそが、将来やりたいことや仕事を決める大切な時期です。冒頭の統計で「子ども」なのは「15歳未満」となっています。しかし、「15歳から」への支援も欠かせません。「自分の努力で何とかしなさい」という大人もいるかもしれませんが、努力だけでは何ともならない社会になっているのです。

まずは支援の「点」を増やすことです。先程もあげた学習支援事業のほかにも、食事の提供を行うNPOなどが居場所作りを進めています。そしてそれを「線」にする取り組みです。高校や大学まで、成長を気にかける社会が必要です。誰かが目を向けていてくれる。それが、子どもの安心に繋がると思うからです。

参考記事:

5日付 読売新聞朝刊(東京13版)「子供人口35年連続減」1面

社説「こどもの日 未来切り開く力を育てたい」3面

5日付 朝日新聞朝刊(東京13版)「子ども1605万人 35年連続で減少」1面

社説「子どもの貧困 学び支え、連鎖断ち切ろう」8面(オピニオン)