アニメ東京ステーション誕生 池袋はアニメの聖地になるか

11月4日深夜に公開されたアニメ『「進撃の巨人」The Final Season完結編(後編)』。皆さんは御覧になったでしょうか。もちろん筆者はリアルタイムで鑑賞し、日本アニメの歴史に名を残すであろう同作の完結を見届けました。13年4月の放送開始から10年、遂にシリーズがその歴史に幕を下ろしました。

原作である漫画『進撃の巨人』は、全世界で1億冊以上発行されている超人気作。当然注目度は高く、X(旧Twitter)では「#進撃の巨人」が世界トレンド1位になっていたようです。同作は、改めて日本アニメの魅力を世界に広げてくれた作品だと言えるでしょう。

原作は21年4月に完結済み。ですが、アニメという映像作品にすることは特に海外市場において大きな意味があります。例えば、日本の漫画は右から左に読み進める他、コマ割りも複雑で、アメコミやフランス語圏の漫画「バンド・デシネ」とは異なる点が多くあります。漫画という媒体は、実は万国共通ではないのです。そういった意味では、アニメ化は世界に向けた「翻訳作業」でもあるのです。

海外売上高は約1兆3000億円と7年間で4倍に増えるなど、好調が続く日本のアニメ産業。その人気をインバウンド(訪日外国人)の増加に繋げようと、アニメツーリズムも活発化しています。10月31日にオープンしたばかりの「アニメ東京ステーション」もその一つ。筆者も行ってみました。

 

■秋葉原に次ぐ、第二のアニメの聖地「池袋」

JR池袋駅の東口から徒歩4分ほどにある「アニメ東京ステーション」。日本のアニメの発信拠点を目指すべく、作られました。入場料は無く、誰でも入ることができます。現在は『NARUTO-ナルト―』が期間限定で展示されており、2階では同アニメやゲームの展示を見ることができます。また地下1階では、現在のデジタルアニメーション以前の、一枚ずつアナログで撮影する手法セルアニメーションの製作工程を見学することができます。

『NARUTO』に登場するキャラクター 「九喇嘛(くらま)」が出迎えてくれる。

 

また、現在豊島区では「としまデジタルラリー」と称したスタンプラリーを開催しています(12月28日まで)。「アニメ東京ステーション」をはじめ、「アニメイト池袋本店」や「トキワ荘マンガミュージアム」など、漫画やアニメ、コスプレに関する企業や施設12カ所を巡ると先着順で景品を獲得することができます。

 

■日本のアニメを守っていくために

成長を続けている日本アニメですが、決して先行きが明るいとは言えません。以前からアニメーターの低賃金や過酷な労働が問題視されており、中国など海外への人材流失も指摘されています。近年になって改善されてきてはいるようですが、依然として待遇は低いままです。制作会社に限ると人件費増などから4割が赤字で、10年以内には日本アニメの地盤沈下が起こるとされています。

『進撃の巨人』が、完結した今もなお商品化や遊園地アトラクションなどでコラボレーションを果たし、人気を継続させているように、原作が終わった後でもやり方次第でファンを維持し、増やしていくことができます。アニメツーリズムでは、15年以上にわたり観光客を呼び続けている事例もあります。聖地巡礼など多方面からアプローチをかけ、国内外問わず多くのアニメファンを増やすことが必要になってくるでしょう。

「アニメ東京ステーション」には、『ドラゴンボール』や『北斗の拳』をはじめとする約120作品、5万点もの資料が保管されていると言います。しかし、筆者が見た限りそれらのほとんどは非公開で、展示は『NARUTO』ばかりでした。今後はせっかくの所蔵資料を活かし、日本アニメの発信拠点と言うに足る、バリエーションに富んだ展示施設にしていって欲しいと思いました。

一般社団法人アニメツーリズム協会が「訪れてみたい日本のアニメ聖地」として全国88カ所もの聖地を挙げている通り、現在、国内には数えきれないほどの聖地があります。そんなアニメツーリズムの中心地に、池袋はなれるのか。目が離せません。

「アニメ東京ステーション」にあったパンフレット。 各種言語に翻訳された聖地巡礼マップがいくつもある。

 

参考紙面:

・8月8日付 [社説]日本アニメは追い風生かせ – 日本経済新聞 (nikkei.com)

・10月31日付 「消滅可能性都市」から「アニメの街」へ 池袋に新施設、狙いは世界 [東京インサイド] [東京都]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

・10月31日付 池袋でスタンプラリー – 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

参考資料:

アニメ東京ステーション (animetokyo.jp)