「神田ブックフェスティバル」改めて考える本の価値

10月28日(土)、29日(日)の2日間、千代田区神保町で「神保町ブックフェスティバル」が開催されました。当日の様子を取材しました。

本の街神保町を貫くさくら通りとすずらん通りがメインロードとなり、多くの出版社がブースを出していました。絶版書や在庫僅少品を半額で購入することができるため、お買い得品を求めて本好きが集まります。

東京大学出版会や法律書を主に出版する有斐閣なども出店しており、一般書だけではなく学術書など幅広いジャンルの本が並んでいました。焼きそばなどの屋台も出店していて、フェスティバルを盛り上げていました。

神田すずらん通りの入り口(2023年10月29日、著者撮影)

今回で31回となるフェスティバルはコロナ禍で開催が難しかった時期を乗り越え、昨年から再開しました。本好きが出版社の方との交流を楽しむ場にもなっています。

ところで、神保町といえば「古本」をイメージする方が多いと思います。実は、10月27日(金)~11月3日(金)の日程で「神田古本まつり」も開催されています。フェスティバルと同じく店頭には並んでいない掘り出し物を求めて、多くの人が路上のワゴンを眺めていました。

2023年10月29日、著者撮影

 

フェスティバル実行委員の方にお話を伺うと、本を屋外で扱うため、天気が気がかりだったそうです。日曜日は朝から雨が降り、2時間遅れてのスタートとなりました。開催にこぎ着けることができ、ほっとしているようでした。終了間際には、駆け込みで売れ残りを買い求める人もいるようで、常連の間では値引き交渉も醍醐味のようです。

 

テレビやゲーム、ユーチューブなど世の中はコンテンツで溢れています。それでも、紙の本を買い求める人がこんなにたくさんいることに驚きました。情報が氾濫するなかで、紙の雑誌や本の売れ行きは低調です。22年の紙の出版物の推定販売金額は、1兆1292億円。これは、前年を6.5%も下回る水準です。一方で、電子書籍は、5013億円と前年比で8.9%増となりました。

 

これから電子化はより一層進むでしょう。物としての本から文字情報としての本へと変化しつつあります。そんな中でも紙の本を求めて、足を運ぶ人も多くいます。著者も実際に手で触れ、ページをめくる動作が心地よく、紙の本派です。改めて、その価値を考えさせられる休日になりました。