どう支える?これからの農業

「今年の夏はとても暑かった」

秋に入り過ごしやすくなった頃には、この一言が口に出ます。ただ、今夏の猛暑はただ暑いだけではなく、日本人の食卓には欠かせないお米にも打撃を与えました。

昨日の朝日新聞朝刊では、猛暑の影響を受けた新潟県のコシヒカリの1等米比率が3%に及ばないという記事が紹介されていました。1等米とは「整粒」の重さが全体の70%以上のコメを指し、例年は70%を超えています。

この評価は主に農協が行い、その結果は農家に支払う価格に影響が及ぶといいます。今後、農林水産省は高温に強い品種への改良を呼びかけ、農家を後押しする方向だといいます。

ただ、お米農家が抱える課題は品質だけではありません。とりわけ深刻だと考えるのが、担い手の高齢化に伴う農家の減少です。JA全農の調査によると、お米農家は2020年に約70万戸と、半世紀で7割減少しています。加えて、昨今の円安やウクライナ情勢による肥料などの輸入価格の上昇も、お米農家を厳しい状況に追い込んでいます。後者の経済的な状況は少なくとも解決の糸口があるでしょうが、前者の就農を促すにはどうすればいいのでしょうか。

この答えを見つけることは難しいと思っています。ただ、高齢化している農家の仕事を手助けし、後押しすることはできると思います。例えば、政府や各企業では、農薬や肥料を散布するためのドローンを使用したスマート農業に注目しています。これにより労働力不足を補え、作業時間を短縮に繋げることで、効率的な働き方が可能になるからです。

25日に訪れた東京モビリティーショーのスタートアップ企業ブースには、スマート農業を推進する製品がいくつも出展されていました。その1つが、株式会社ハタケホットケが開発した田の除草ロボット「ミズニゴール」です。


除草ロボットの「ミズニゴール」(筆者撮影)

田を走らせて水を濁らせ、光合成を遮ることで、雑草の増殖を防げるといいます。実際に、人がチェーン除草機を使用すると15時間かかる除草作業を、この製品は1時間で済ませます。昨年の長野県での実証実験では、約70%の田で良好な結果が出たそうです。開発に携わった同社代表取締役の日吉有為さんは、自身が体験して思い知った除草作業の厳しさが開発に至った経緯だと話していました。ただ、まだまだ製品は開発途上だとも話していました。今後どうなっていくのか、話を伺うだけでわくわくする挑戦だと思いました。

今はAIも様々な形で進化しています。こういった技術をスマート農業をはじめとする幅広い分野に応用し活用していければ、農作業の効率化を推進することになります。ひいては就農問題の解決にも繋がっていくのではないかと思います。品種改良による高温に強い品種というのも無理に作る必要性が無くなるかもしれません。

 

参考記事

26日付 朝日新聞朝刊(13版)7面「猛暑1等米が急減」

参考資料

読売新聞オンライン「コメどころ新潟、昨年70%以上の1等米が今年は12%…歴史的猛暑に関係者落胆」

JA全農「現在の日本のお米の実態」

農林水産省「令和4年度 食料・農業・農村白書(令和5年5月26日公表)」