9月1日、セブン&アイ・ホールディングス(HD)は傘下にある百貨店そごう・西武を米投資ファンドに売却することを正式に決定しました。それに反発するそごう・西武の労働組合は先月末、西武池袋本店(東京都豊洲区)でストライキを実施しました。大手百貨店で61年ぶりのストライキとして注目を集めました。
従業員や地域の人々との話し合いが十分になされていなかった結果だと思われます。労組側は事業継続や雇用を守ることを求め、これからも経営陣と協議を続ける方針です。買い手となる米投資ファンドは家電量販のヨドバシHDと連携して、池袋本店など複数店を改装する方針を打ち出しています。すでに池袋本店北側の地下1階から6階を中心にヨドバシが出店する案があり、そうなれば百貨店の売り場は大幅に減るため、そごう・西武の社員は職場を失いかねません。
セブン&アイHDは2006年にそごう・西武を買収し、百貨店事業に乗り出しました。しかし、売上は伸びず、3000億円の借入金を抱えています。これ以上の投資は難しく、手放すことになりました。買収時、全国に28あった店舗数は、すでに10にまで減っています。
世間では西武池袋本店の報道で溢れかえっていましたが、その陰で8月31日、そごう広島店(広島市中区)の新館が静かに幕を下ろしました。賃借契約が満了を迎えたことが理由です。閉館に伴うセレモニーはなく、通常通り午後7時半に閉店し営業を終了しました。新館は広島店の開店20周年に合わせて1994年4月、本館に隣接するビル内にオープンしました。29年4ヶ月の歴史を持つ新館のシャッターが下りる際に、地元の人々は拍手でお別れをしました。2025年春にかけて売り場を本館に集約する改装を進め、新館の跡地にはNTT都市開発が新たな商業施設を建築する方針です。
広島県在住の40代男性は、「バスセンターに併設されていたし、ブランド物も揃っていたので、利用する人が多かった。新館閉館は残念。中四国最大都市の広島市の勢いが衰えそうで心配」と話していました。新館にしか無かったブランドショップは今後どうなるのでしょう。エルメスは無くなり、本館に移動する見込みもありません。広島県民は今後、岡山県や兵庫県へいかなければ買えなくなります。
筆者にもそごう広島店での思い出があります。母の誕生日が近づくと家族で出かけ、ブランドショップで誕生日プレゼントを買いました。自宅は広島県福山市ですが、広島市に行くと毎回立ち寄る場所でもありました。世の中では西武池袋本店の売却話で盛り上がっていますが、筆者のようなそごう広島店を利用していた人々は最後の別れに悲しみを抱いています。
近年、そごう・西武のように地方の百貨店の閉鎖が続きます。中国地方では天満屋(岡山市北区)が昨年6月に緑井店(安佐南区)を閉店しました。来年1月には尾道福屋(広島県尾道市)、島根県唯一の百貨店である一畑百貨店(松江市)が幕を閉じます。近年増えつつあるショッピングモールに負けず、地域の活性化に欠かせない存在であり続けるために百貨店はどうしていくべきなのでしょうか。
参考文献
・朝日新聞デジタル、「『そごう・西武』の売却決定」、ニュースの要点 きょうの3本、2023年9月1日、
https://digital.asahi.com/articles/ASR80758SR80UEHF001.html?iref=pc_ss_date_article
・日本経済新聞、「そごう・西武、西武池袋本店を通常営業 米ファンド傘下」、2023年9月1日、
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC011KE0R00C23A9000000/
・読売新聞オンライン、「『そごう・西武』労組、西武池袋本店でスト突入…セブン&アイは売却を最終決定」、2023年8月31日、
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20230831-OYT1T50108/
・TBS NEWS DIG、「セブン&アイHD社長 そごう・西武売却に『このままでは地盤沈下し雇用守れなくなる』」、2023年9月1日、
https://news.yahoo.co.jp/articles/4bf650c76f3e98fc558f145825fc8673dc648c73
・中国新聞デジタル、「そごう新館、思い出をありがとう 大勢の客が閉館見届ける」、2023年8月31日、
https://www.chugoku-np.co.jp/search?fulltext=%E3%81%9D%E3%81%94%E3%81%86
・中国新聞デジタル、「そごう新館31日閉館、29年4カ月の営業に幕 福屋広島駅前店も6~9階の営業終了」、2023年8月30日、