交差点に枯山水?「グリーンインフラ」に先人の知恵光る

京都を歩いていると時々、お寺の枯山水のようなものを目にすることがあります。交差点の歩道部分に、砂利が敷かれ、石や草木が散りばめられたスペースがあるのです。街を歩くだけで、京都らしさを感じることができる風雅な都市整備は、私たちの心を豊かにしてくれています。

筆者撮影(京都市役所前の雨庭)

筆者撮影(京都市役所前の雨庭の説明)

実はこのスペース、美しいだけではありません。「雨庭」と呼ばれ、水害対策の一環として機能しているのです。雨水を直ちに下水道に流さず、一時的に貯える機能を持っています。貯留した水はゆっくりと土壌に浸透します。大量の雨が降った際、下水道に流れ込む水量を減らすことで、路上の氾濫を抑制する効果を持っているのです。京都市HPによると、現時点で市内11か所に設置されています。

国土交通省によると、日本の年平均降水量は1718㎜。これは世界平均の2倍に相当するそうです。各地では水害が頻発しています。日本は水資源に恵まれている分、常に水害の危険性がつきまといます。大規模な治水対策が難しい都市部において、大きな工事を必要としない「雨庭」の必要性は一層高まるはずです。実際に熊本県では2030年までに、県内に2030か所の整備を目指す動きが見られます。

このように、自然環境が持つ機能を活用した防災設備は、「グリーンインフラ」と呼ばれ、持続可能で魅力的な街づくりに一役買っています。「雨庭」という概念は1990年代のアメリカで生み出されたものです。しかし、室町時代に建立された上京区の寺院、相国寺の枯山水には治水効果があるといわれています。日本で脈々と受け継がれてきた庭園文化は時代を超え、「雨庭」として私たちの暮らしを豊かにしています。温故知新という言葉があるように、これからも、先人の知恵から現代にも役立つ新たな発見があるかもしれません。

 

参考記事

読売新聞『雨水 庭にため水害対策 自宅・企業敷地に ゆっくり地下へ 下水流入減』2023年3月18日

朝日新聞『(元気力)神谷要さん:2グリーンインフラの価値/島根県』2022年7月10日

朝日新聞『まるで庭園、眺めて楽しい治水対策「雨庭」大学のグラウンドで実験』2022年1月26日

参考資料

京都市『「雨庭」とは…』https://www.city.kyoto.lg.jp/kensetu/page/0000291580.html (2022年12月5日)

国土交通省『海外事例と我が国でのグリーンインフラの取り組み』https://www.mlit.go.jp/common/001267827.pdf

国土交通省「グリーンインフラ」https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/environment/sosei_environment_mn_000034.html

国土交通省『3-1 洪水を受けやすい国土』https://www.mlit.go.jp/river/pamphlet_jirei/bousai/saigai/kiroku/suigai/suigai_3-1-1.html

毎日新聞『枯山水に治水効果 防災対策の「雨庭」造りに期待』(2018年12月12日)