博多祇園山笠 安全対策と継承、どちらも守っていくために

福岡の祭と言えば、やはり、博多祇園山笠。重さ約1トンの「舁(か)き山笠(やま)」を担いで疾走する男たち。沿道から勢いよく浴びせられる勢(きお)い水。声援を送る観覧者たち。この日この場所にいた全員が、熱気に包まれていました。

恵比寿流の山笠(15日筆者友人撮影)

15日、博多祇園山笠のクライマックスとなる「追い山笠」が福岡市博多区で行われました。新型コロナウイルス感染症予防の制限もなく、伝統通りに開催できたのは4年ぶりです。「流(ながれ)」と呼ばれる7つの自治組織が、舁き山笠を担いで約5キロを駆け抜けます。

盛り上がりの一方で、重大な死亡事故が発生してしまいました。午前5時半頃、祭に参加していた男性が山車にひかれ、搬送先の病院で死亡が確認されました。死亡した男性は、流の一つ千代流に所属する舁き手の1人。山笠の前方を担っていました。神社から約400メートル付近で転倒し、山笠の土台「山笠台」の底部分に巻き込まれたとみられます。死因は、胸を強く打ったことなどによる出血性ショックでした。

事故発生現場は、福岡市博多区冷泉町の県道。交差点のカーブに差し掛かる手前付近です。千代流では事故の数分前に山笠が前方に傾き、山笠に乗る「台上がり」を務めた2人が落下し、負傷者が出ていました。

千代流の山笠は、18日から福岡県庁1階ロビーで展示される予定でしたが、死亡事故を受けて中止されました。事故の影響は今後、あらゆる部分に出てくるでしょう。

この事故について、舁き手として祭りに参加したことのある友人に聞いてみました。

「残念なことだが防ぎようのある事故だと思う。本格的に山を舁くのはコロナの影響で久しぶりであり、ベテランでも例年以上の練習が必要だったのではないか。この事故がきっかけで、市民に親しまれる伝統行事が途絶えてほしくない」

博多祇園山笠、約780年の歴史があり、市民にとって誇りの祭です。継承と安全対策、どちらも守らなければなりません。全国の祭でも、今後の対応が求められるでしょう。

 

参考記事:

・16日付 読売新聞オンライン 死亡事故の「山笠」、数分前には傾いて2人落下・負傷…博多の街疾走する「追い山笠」で悲劇 (msn.com)

・15日付 読売新聞オンライン 【動画あり】博多祇園山笠クライマックスの「追い山笠」…4年ぶりの歓声を受け駆け抜ける:地域ニュース : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

・15日付 日本経済新聞 博多祇園山笠、熱気最高潮 疾走の「追い山笠」に人垣 – 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

参考資料:

起源七百八十二年 博多祇園山笠の歴史 – 博多祇園山笠 (hakatayamakasa.com)