結婚の自由をすべての人に 2.九州訴訟「違憲状態」!【後編】

「結婚の自由をすべての人に」を掲げる九州訴訟を、2回にわたってお届けしています。前編では福岡地裁と他4地裁の判決内容について、後編では当日の福岡地裁で感じたこと、原告の一人こうぞうさんへのインタビューを取り上げます。

前編はこちらから↓

結婚の自由をすべての人に 2.九州訴訟「違憲状態」!【前編】 | あらたにす (allatanys.jp)

 

あいにくの雨の中、福岡地方裁判所は傍聴券を求める人で溢れ、原告や支援者、報道各社の熱気に包まれていました。これまでの審理の時とは比較になりません。筆者は抽選に外れてしまい、地裁の隣にある県弁護士会館で待機。裁判長が判決を読み上げる場面に立ち会えなかったことは残念です。

しかし、原告や弁護団の皆さんによる判決内容が書かれた旗出しを待つ中、結果を心待ちにする皆さんと交流することができました。名古屋地裁の判決を報道で知って初めてこの訴訟に触れたという方、急に雨足が強くなったときに傘を差しだしてくださった方。裁判を傍聴することはできませんでしたが、判決の場に来たからこその出会いがありました。

開廷してから20分ほど経過したとき「違憲状態だって」「24条2項は違憲だ」との声が耳に入ってきました。それは一足先に法廷を出た傍聴人たちの会話です。筆者は共に待つ人々と笑顔を見せあい喜びを分かちました。一方で「名古屋地裁判決が良かったから期待しすぎていた」と落胆の気持ちを表す人もいました。実質勝訴を知った瞬間、地裁前を陣取っていた人々は予想していたよりも冷静だったのです。

雨が降る中、旗出しを待機する報道各社(8日筆者撮影)

 

原告の皆さんと直接お話しできたことも、そんな出会いの一つです。判決を控えた週末、原告の一人であるこうぞうさんにお考えを伺いました。

―はじめに、現在日本で同性婚が認められていないのはなぜだと考えられますか。

「大きな要因は、同性婚の法制化に政府が後ろ向きであることだと思っています。自治体や民間企業の取り組みが進み、各種調査では同性婚法制化に賛同する割合が過半数。社会は変化しています。それでも政府は『想定されていない』と同性婚法制化を拒み続けています。」

―5月30日の名古屋地裁判決を聞いて、どのように思われましたか。

「違憲判決を引き出すことはとても難しい上に、大阪地裁では合憲判決であったことから、期待と不安が入り混じった心境でした。憲法24条2項について違憲とする中で、尊厳や人格的利益について言及され、人権問題であると司法は理解してくれているのだ、と伝わってきて嬉しく思いました。」

―判決を控えて期待していること、不安に思っていたことを教えてください。

「訴訟の中で、国は論理的とは思えない主張もしています。人権最後の砦ともいわれる司法が合憲判決を出すならば、よりどころがないように感じる人もいるであろう、と不安です。一日も早い同性婚法制化を促すメッセージが含まれる、明確な違憲判決を期待しています。」

最後に、訴訟応援企画の記事でまさぱんさん(原告のうち一組のカップル)にしたものと同じ質問をしました。

―今の学生(若者)に伝えたいことは何ですか。

「選挙や政治に関心をもってください。各種調査で同性婚に賛同する声が過半数を超え、特に若い世代の賛同の割合は圧倒的です。多くの若者が『なぜ同性婚が認められないの?』と思っていることでしょう。地元の議員さんに直接や手紙で、思いを伝えてみてください。『賛同する人間がここにもいるのだ』ということを可視化させ、国の後ろ向きで重い腰を、一緒に持ち上げてください。」

 

同性婚が法制化されていない現状に、違和感を抱いている若者は多くいます。実際に、筆者の友人も疑問の声を上げていました。同時に、この問題に関心のない人がいるのも事実です。同性婚は自分と関係ない、そう思っている人は少なくないでしょう。しかし、カミングアウトしていないだけで仲の良い友人や家族、親戚、さらには将来生まれてくる子供たちが、同性婚を求めているかもしれません。この問題は他人事ではない。すべての人がこの意識を持つことができたら、発信することができたら性的指向を理由に苦しむ人は減るはずです。

5つのうち、4地裁が「違憲」「違憲状態」の判決を出しました。けれど、同性婚法制化への道のりはまだ長く続きそうです。これからも自分事として捉え、発信していきます。

取材を受けてくださったこうぞうさん、サポートしてくださった森あい弁護士、今回はありがとうございました。

 

訴訟応援企画取材記事

結婚の自由をすべての人に 1.私たちの発信力は侮れない | あらたにす (allatanys.jp)

参考記事:

・2月20日付 朝日新聞デジタル 同性婚、法律で「認めるべきだ」72% 前回から増加 朝日世論調査:朝日新聞デジタル (asahi.com)

・8日付 読売新聞夕刊(4版)1面 「同性婚認めぬ規定『違憲状態』」

・9日付 朝日新聞朝刊(13版)2面(総合2) 「同性婚 踏み込む司法」

参考資料:

【九州】違憲判決獲得(福岡地裁判決) | 結婚の自由をすべての人に – Marriage for All Japan –