筆者が中学生の頃、テストが終わった翌日の友人と先生の会話です。
「せんせ~!〇〇先生にテスト早く返して~って言っておいて!」
「〇〇先生、昨日夜11時まで学校に残ってテストの採点してたよ。大変そうだったよ。」
7.8年近く前の話ですが、筆者はこの会話がずっと頭に残っています。テストを早く返してほしい気持ちに同情しつつ、中学生ながら、先生って本当に大変だな、と感じた覚えがあります。
そんな大変な職業の印象がある、「教員」。まず「教員」になるためには、教職免許取得が必須です。筆者が通っている大学であれば、所属している学部学科の授業と同時並行で、教職の授業の単位も取得しなければなりません。筆者にも、教職を取っている友人がいますが、この単位取得が、とてつもなく大変そうです。その友人は法学部。テスト週間には、法学部のテスト地獄に追われ、また教職の授業レポートや課題にも追われます。終わったと思えば、部活動の練習。そんな日常も、大学生ならではの青春と言われればそれまでですが、なかなかに過酷な青春です。「大学は人生の夏休み」という言葉はどこへやら。
そして何といっても、教職一大イベントが「教育実習」です。筆者の大学は、先週がテスト週間でした。が、教職を取っている人は参加必須の「教育実習」が丸被り。そのため、テストは受けられず全て追試験で受けなければなりません。追試は1科目ごとに追試験料がかかりますし、成績は1割減になってしまいます。これは、あんまりではないでしょうか。
教員免許取得は大変。並大抵な覚悟では、心が折れてしまいそうです。また、晴れて教師になったとしても残業に追われる。そのような現状では、教員になりたい人は増えず、教員不足が深刻化しているのも仕方がないように思います。そんな中、文部科学省は公立学校教員の採用1次試験の前倒しを、各地の教育委員会に要請しました。民間企業の採用の早期化が進み、教職の人材が確保しづらい状況に陥っていると判断したためです。しかし、ここで疑問が生まれます。早期化を進めたところで、教員不足は解消されるのでしょうか。民間企業への就職ではなく、教師の道を選ぶ人は増えるのでしょうか。おそらくNOです。
採用1次試験前倒しのニュースのコメント欄には、こんなコメントがありました。「まずい飯屋が閉店時刻を早めたところで客は来ません。スタッフの接客態度が悪い上、今にも倒れそうな建物ならなおさらです。文部科学省や教育委員会のすべきことは、味や環境の改善と、客側の視点に立つことだと思います。」まさにその通りだと思います。
また、今朝の朝日新聞のオピニオン&フォーラムには、「学校現場任せの働き方改革は必ず生き詰まる。授業時数や教員定数の大胆な改革こそが学校現場を救うと現場から訴えたい。」との、小学校校長の「声」が載っていました。
先生たちの忙しさは生徒たちにも伝わっています。筆者は、先生になりたいと思ったことはありません。16年間先生の姿を見てきて、あまりに大変で過酷だと感じるからです。教師不足解消のために、第一に手をつけるべきことは、現場の改善なのではないでしょうか。先生として働くということが、過剰な負担にならないように。また、教師の夢を叶えた人間を潰すことにならないように。働き方改革を進めるべきだと思います。その状況が改善されることで、「先生になりたい」そんな思いを持つ人を増えていくのではないでしょうか。教員不足改善の鍵は、「採用1次試験前倒し」ではなく、「働き方改革」だと感じます。
参考記事:朝日新聞 愛知13版12面 オピニオン&フォーラム 声 どう思いますか 教員不足