考えなくてはならない「子どものネット利用」

「バナナを320本食べると、死んじゃうんだよ」。もし、あなたが子どもをもつ親だったら、こんな言葉にどう答えますか。「もの知りで、すごい」と褒めますか。それとも、正しい情報を教えようと手を差し伸べますか。

冒頭の言葉は、先月29日の読売新聞朝刊の1面で紹介されたものです。

Twitterのトレンドで、筆者はこの言葉を知りました。最初は、お笑い芸人のネタか、著名人がテレビ番組で口にした軽口だと思い込んでいました。しかし、そんな楽観的にとらえていい言葉で、内容ではありませんでした。記事で紹介されたのは、千葉県在住の小学5年生の男子児童。根拠が曖昧だったり、明らかでなかったりする都市伝説を発信する動画投稿サイトの虜になっているといいます。平日は2時間、休日はスマートフォンを6時間眺め、そこで得た「バナナ320本」のような根拠のない情報を誇らしげに学校で話し、最近では言葉遣いも乱暴になってきたと紹介されていました。この背景にインターネット環境があり、子どもの思考を変化させていっているのではないかと指摘していました。

この記事を読んだとき、率直に思ったのが、ネットと子どもの関係が切り離すことのできないところまで来ているということでした。筆者が小学生の頃は、ネットに触れることはほとんどありませんでした。ましてや今どきの子供たちのようなスマートフォンもなく、携帯をもつことも一般的ではありませんでした。しかし、今の保護者は「子どもが欲しがったから」や「周りの子どもが持つようになったから」という理由で持たせる人が多いそうです。

こういった安易な考え方が結果として、子どもとネットの関係を強めている一つの要因にあると思います。最近ではネットの利用が子どもの言葉遣いなど外面部分だけでなく、内面にも影響がある事がわかってきています。米国では「SNSの利用は子どもや若者のメンタルヘルスに悪影響を及ぼす重大なリスクがある」といった報告書も出ています。加えて、一日3時間以上利用すると、うつ病などの問題を抱えるリスクが倍増するとのことです。

こういった点を踏まえ、最初の質問へと戻ります。筆者を含め多くは、褒めはせず、正しい情報を伝えようと努力すると思います。なぜなら、携帯を持たせるのは、保護者や周囲の大人の責任が大きいからです。

とはいえ、これから親になるかもしれない私たちも、SNSやインターネット上の言葉を信じ込んでしまっている部分があります。そんな大人たちが、しっかりと子どもたちに寄り添って親身になって考え、ネット利用の危険性を伝えることができるのでしょうか。筆者に答えはまだありません。これからも腰を据えて考えなくてはいけない問題だと思います。

 

参考記事

5月29日付 読売新聞朝刊(13版)1面「小5『バナナ320本で死ぬ』」関連記事28、29面

6月3日付 読売新聞朝刊(13版)1面「大量の薬『いいね』次々」関連記事35面

参考資料

政府広報オンライン「ネットの危険からこどもを守るために保護者が知っておきたいこと」

PRTIMES「小学生の親子におけるスマホ利用実態調査」