ジャニーズの性加害問題 ネットで薄れがちな「被害者像」

元ジャニーズJr.のカウアン岡本さんの告発で、大きな議論が巻き起こっている故ジャニー喜多川氏による所属タレントへの性加害問題。

今年3月に英BBCが問題に切り込んだドキュメンタリー番組を制作。これをきっかけとして1か月後には、岡本さんが日本外国特派員協会で記者会見を開きました。5月14日にはジャニーズ事務所の公式HPで藤島ジュリー景子社長が謝罪動画を公開しましたが、立憲民主党がヒアリングを行うなど、問題は今もなお終息していません。

テレビを付ければ、どこかの番組に必ず顔を出しているジャニーズアイドル。現在放送中の大河ドラマ「どうする家康」のように、アイドルとしてだけではなく役者など幅広い活躍ぶりで、名実ともに評価の高いタレントが多く在籍しています。周りでもジャニーズ好きの友人は多く、実際に中学時代の筆者も新曲が発売されれば必ずCDを買っていたほど、ジャニーズにハマっていた時期がありました。

それくらい親しまれていたからでしょう、今回の問題を巡り、ネットでは様々な意見が飛び交っています。また、Youtubeでは暴露系の動画が多く公開され、何十万もの視聴回数を記録しています。今回の問題では、喜多川氏がその圧倒的な地位を利用して、自らの所属タレントを「食い物」にしたという点で、当人だけでなく黙認していた事務所にも責任があることは間違いありません。しかし、性被害問題というのは加害者がいれば、もちろん被害者もいます。ジャニーズについての暴露系の動画では、「だれがスペオキ(※)だったのか」という内容が目立ちます。

「枕営業」など、芸能界と性にまつわる話題はしばしばゴシップのように扱われます。しかし、今回の告発で明らかになったように、地位を利用したこのような行為は極めて深刻な性加害なのではないでしょうか。そうだとすれば、「スペオキ」と揶揄するような動画はセカンドレイプになるのではないかと思います。顔と名前が広く知れ渡っている芸能人であれば、なおさらです。

今後、同じような被害が起きないためにも、実態を把握することは必要ですし、その告白の数が多ければ、被害の広がりも認識できます。ですが、性被害の問題はとてもセンシティブであり、公表を他人が強要することは許されません。

報道やネットでの反応を見て、ゴシップと性被害の境はどこなのか考えてしまいます。問題を直視し、批判的に考えるべきではありますが、被害に遭った人の存在を忘れてはいけません。世間の注目度が高まる中で、いまだに口を閉ざしている方の心にずかずかと踏み入るような議論になっていないか、「芸能」を消費してきた側の向き合い方にも考えるべき部分があるのではないでしょうか。

※「スペオキ」…「スペシャルなお気に入り」の略。ジャニーズファンが好きなアイドルについて言う際に使われることもあるが、ここではジャニー喜多川氏が特に気に入っていたタレントを指す。