新たな学習漫画の王道になるか 『勉タメジャンプ』

昨日、5月5日はこどもの日。小さいころから本が好きだった筆者が、今子どもにおすすめしたい本があります。先月集英社から発売された雑誌『勉タメジャンプ』です。

子供の頃、とくに気に入っていた児童書は、朝日新聞出版社から発行されている『科学漫画サバイバルシリーズ』でした。海外も含めて累計3000万部も読まれているという大人気シリーズで、「本はあまり読まないけど、これは読んだことがある」という友人も周りに多くいます。その特徴は、学習漫画というジャンル特有の読みやすさにあります。私自身、この本に出合っていなければ、それほど読書を好きにはなっていなかったはずです。

今回発売された『勉タメジャンプ』も同じく学習漫画だと言えますが、書籍ではなく、雑誌であることが大きな特徴です。先に挙げたサバイバルシリーズを代表とするいわゆる学習漫画は、「宇宙」「人体」などテーマごとにまとめられ、シリーズ化されるのが一般的です。このため、そのテーマ自体に興味を抱かなければそもそも子どもが読まない可能性もあります。

一方『勉タメジャンプ』は、人体やピラミッドといったいわゆる学習漫画らしい題材以外にも、YouTube動画の作り方や料理のレシピなど一冊の中に様々なテーマの漫画が連載形式で掲載されています。「興味のある分野以外を知るきっかけになる」という雑誌の長所を存分に活かしている点が新しく、魅力であると感じました。

学習漫画雑誌というジャンルを新しく打ち立てることができたのは、「ジャンプ」という伝統あるブランドを持つ集英社ならではと言えるでしょう。それだけに、今回掲載されているのは、どれも学習漫画という枠を超えた面白い作品ばかりです。それもそのはずで、全ての作品に週刊少年ジャンプで連載経験を持つベテラン作家が関わっているのです。漫画の題材自体も作家の興味関心を元に決められているうえ、「漫画をきっかけに学習に関わる読み物ページを読んでもらう」構成にしていることもあり、エンタメ要素がちりばめられ、すらすらと読むことができました。

個人的なお気に入りは、『ぼくたちぜんぜん恐くない竜』と『犬えいご‼』です。前者では恐竜の漫画なのですが、獰猛でかっこいいイメージがある恐竜が可愛くデフォルメ化されており、読者の思い込みを覆している所に興味を惹かれました。一方後者は、『ハイキュー!!』でお馴染みの古舘春一先生が描く犬の絵に、ただ状況を表した英文がついているだけの絵本のような展開で、特段勉強になるわけではありませんが、とても可愛いのです。

もちろん欠点もあります。一番は、ずっと店頭に置いておける本ではないという点でしょうか。雑誌なので返本期間があり、次の号が発売される頃には買えなくなってしまうのです。いずれ連載はそれぞれに単行本化され、今後も手に入れることはできると思いますが、「特定のジャンルに偏らない学習漫画」という利点は失われます。また、雑誌ということで装丁もそこまでしっかりしておらず、長期間の保管には向かない印象です。学びを深めるというよりは、この雑誌で興味を持ったことをきっかけに本を買ったり、学んだりといった、勉強の出発点を作る雑誌と言えるでしょう。

読書習慣の有無は、小中学生時代にどれだけ本を読んだかで決まると筆者は思います。その際、重要なのは内容で、媒体は活字であっても絵であっても大差はありません。漫画と文章の違いはもちろんありますが、どちらも、読もうとする原動力は好奇心だからです。その点からも、『勉タメジャンプ』は読むハードルがとても低いので、特に読書に苦手意識を持つ子どもに是非おすすめです。

『勉タメジャンプ』は2023年に3回の刊行を予定していて、次回は自由研究を特集した夏号が7月中旬に発売されます。一漫画ファンとして続巻にも注目していきたいと思います。

 

参考紙面:

少年ジャンプから誕生した学習マンガ雑誌「勉タメ」…副編集長「子供の頃のきっかけって大事」 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

宮城:「ジャンプ」学習マンガに 仙台出身の副編集長が企画:地域ニュース : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

 

参考記事:

《「勉タメジャンプ」掲載5作品が読める》「本当に面白いマンガができなければ発売しない」…週刊少年ジャンプ編集部が学習マンガ雑誌を出した“本気の理由”とは | 集英社オンライン | 毎日が、あたらしい (shueisha.online)

異色の学習マンガ誌「勉タメジャンプ」誕生の裏側 担当編集・本田佑行さんインタビュー – MANTANWEB(まんたんウェブ) (mantan-web.jp)